ごめん、ごめん……

ダイソー ペットの被りもの
猫の話
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 事務所のドアを開くといつだって、事務所の中にはサヨリがいて、音も立てずに僕の足元に纏わりつくものだから、尻尾なんか踏んじゃったりして───ごめん、ごめん(笑) こんな毎日が日常でした。サヨリに向かって「ごめん、ごめん(笑)」と、僕が言うと「にゃー!」っつーて。サヨリ様がお怒りになるものだから「ご・め・ん・な・さ・ぃ~!」っと、謝罪するのが常でした(汗)

 二日前。サヨリが自分で立てなくなって、自分で歩けなくなって、自分でトイレにも行けなくなって……お尻をオシッコで濡らしちゃって。自分でご飯も……食べられなくて……。事務所のドアを開ける瞬間、嫌な予感ばかりがして……。あ、オムツ買うの忘れてた。ごめん、ごめん……。

 それでも、最後まで生きてくれました。最後まで、僕の隣でいてくれました。

 ごめん、ごめん(笑) その言葉を掛けることは出来なかったのだけど、僕の隣で静かに眠るように旅立ってくれました。それだけが救いです。

───お尻がこんなに濡れちゃって……

 もう、自分でトイレに行けなくなったので、昨日の夕方、雨に濡れながらオムツというのを買いに行きました。猫のオムツが見つからなくて、小型犬のオムツを買いました。その時は、まだ……先があると思っていて、ちゅーるもたくさん買いました。元気になって、ほしくてほしくて。エナジーちゅーるというのも買いました。ちゅーるだけ、サヨリは食べてくれたのです。濡れたサヨリのお尻を拭いて、サヨリにオムツをしてあげると、少し嫌な顔をしました。ごめん、ごめん……。

 今日の記事を書こうとすると、頭が全く回りません。書くことが決まらなくて〝猫の恩返し〟という記事を書きました。今になって思えば、僕はサヨリへの感謝の気持ちを書いたのでしょう。ブログを更新してから、相棒にメールをしました。僕に沢山の書籍を送ってくれたお礼です。メールを書きながら、相棒にサヨリの今。それを、告げるかどうか悩みました。

 抱っこ帯の中にサヨリを抱いて、サヨリの温もりを感じながら、相棒へのメールをしたためていると、サヨリが少し辛そうにしていたので、リクライニングチェアの上に毛布を敷いて、ふわふわにして……サヨリはふわふわが好きでしたから。座席をふわっふわにしました。抱っこ帯の中、痛かったかな? ごめん、ごめん……。

 サヨリの体を別のお気に入りの毛布に包んで、ふわっふわの上に寝かせました。サヨリは僕の隣で眠っています。僕の手は、いつでも頭を撫でられる距離にあります。何年も前から心づもりも出来ています。でも、まだ時間はあるでしょう。しんどくないかい? ごめん、ごめん……。

 サヨリの寝顔を眺めながら、相棒に現状を伝えました。〝もう、サヨリは長くありません……〟と。〝後数日、または、数時間後……サヨリが天に召される時が来たら、お悔やみなんて要りません〟と。がんばったね、偉いね、いい子だ……サヨリを沢山褒めてあげてくださいね……〟と。

 メールを飛ばしてから、明日の記事を書き始めました。残された時間の余裕がほしかったのです。サヨリとブログを書いた八年間。それを思いながら書いていると……サヨリの寝息が止まりました。とても静かになりました。ふと見ると、サヨリの呼吸が止まっていました。最後の最後で、寂しい思いをさせちゃったね。ごめん、ごめん……。

 もう動かない。サヨリの体を、僕は抱きかかえました。ぐったりとしていて、サヨリの全身から力が抜け落ちていました。右腕にサヨリの小さな頭を乗せて、お姫様抱っこをしながら、相棒にメールを書き、ご報告とお礼の記事を書き、それをXに投稿すると、温かいお言葉を、たくさんたくさん、いただきました。お返事を書きながら、サヨリは幸せな子だなと思いました。僕は、有り難いなと思いました。

 全てのお知らせを書き終えると、日付が変わってしまいました。サヨリを抱いて、僕は最後のお散歩へ出かけました。胸の中で眠るサヨリに、何を語ったのかを覚えていません。お散歩から戻る頃、サヨリの体は固くなっていました。ようやっと、僕は現実を受け入れました。痛くないかい? ごめん、ごめん……。

 昨夜は、あまり眠れませんでした。今夜は深夜作業ですから午前中、サヨリを旅立たせる準備をしました。初めてつけたオムツを外して、サヨリを毛布に包む時、少し痛そうな感じになります。痛かったかな? ごめん、ごめん……。段ボールに入れる時も、段ボールの角がサヨリの頭に当たりました。痛かったよな? ごめん、ごめん……。

 全てを終えて事務所のドアを開けると、事務所の隅々に視線を走らせ、僕の目は……サヨリの姿を探していました。僕はサヨリがいると思い込んでいたのです。そっか、そっか……ごめん、ごめん(笑) そこでようやく、僕の視界が歪みました。バカだよね。ごめん、ごめん……。

 沢山の方々からお優しい言葉をいただきました。マフラーの話や、お散歩の話。お刺身の話にいたるまで、サヨリとの懐かしい思い出が、頭の中に蘇りました。この場をお借りしてお礼申し上げます。サヨリを可愛がっていただいて、ほんとうにありがとうございました。

 肉体の呪縛から解き放たれて、足取りも軽やかに、忍者のようにテテテテテ……。サヨリは今頃、虹の橋へと向かう旅の途中なのでしょう……だから、今日もサヨリは元気です(笑) 二十年近くも、お父ちゃんに付き合ってくれて───ありがとね。

 雉虎細魚 

コメント

  1. サヨリさん、厳しい夏も乗り切って、ここまで十分すぎるほどに頑張りましたよね。ほんと、可愛いくて賢い子です。そして、雉虎さんも頑張りましたね。最後まで優しく…その言葉どおりだったと思います。愛猫を看取るのは辛く悲しいことです。この報告を書くことも辛かったと思います。 サヨリさんも雉虎さんも頑張りました。雉虎さん、ご無理はなさらず、ご自愛くださいね。ゆっくり休んでください。

    • らむさん、お久しぶりです。
      最後までサヨリはいい子でした。とてもとても、いい子でした。とても賢い猫でした。ほんの数分の間に、眠るように逝ってしまいました。辛くない、悲しくないと言えば大嘘です。けれど人間ならば大往生。だから、僕もサヨリも幸せでした。少しお休みをいただきますが、必ず帰ってきますから、それまで待っていてくださいね(笑)
      この写真は、僕が一番好きな写真です。ねぇ、らむさん。可愛いでしょ?

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