ルックバックに、X(旧ツイッター)がざわついていた。Amazonプライムビデオで配信が始まったからだ。女の子が机に向かう後ろ姿……知ってる。このイラストも、X(旧ツイッター)でバズっていた。いずれ、詳しく調べることになるだろうけれど……現時点でそれ以外、何もしらない。でもたぶん、それでいい。
ここから先は、若干のネタバレを含みます……。
何もしらないけれど、謎の興味が僕にはあった。これだけバズり散らかしているのだ。この作品には何かある。アマプラ入ってるし、1時間くらいのアニメだし……そんなぶらり散歩気分で、ブログを書きながら、本編をチラ見して。あっという間にエンドロールが流れてゆく───は……と、僕は思った。
学年新聞の四コマ漫画と小学校の卒業証書が、藤野と京本(引きこもり)を引き合わせた。担任に頼まれた藤野は、引きこもりの京本の家へ卒業証書を届けることなる。藤野の才能に憧れを持つ京本は、藤野を「先生」と慕い、漫画をやめた理由を問う。その理由が、京本の絵の才能だった藤野は「賞に出すのを考えてる」と、マウントを取った。その後、彼女たちは一緒に漫画を書き始め、友情を深めながら、プロとしての頭角を現し───ついに雑誌連載が決定した。その矢先「美術の大学に行きたい……から。連載……手伝えない」京本からの告白が。これが、アニメ中盤までの流れである。思えば、京本のネーミングモデルは……なのだろう。
漫画家、画家、アニメーター……そして、作家。クリエイターを目指す若者が、こぞって感想を述べるのも頷けた。ユーチューブでは、考察動画が花盛りだろうか? そりゃ、そうなる。とはいえ、こちとら還暦前である。周りにアニメの意見を交わす相手がいない。題材が題材だけに、そんなことを口にしようものなら。いい年をして……とか、いまさら……とか、現実を見たら?……とか。そっちへ話が流れるのは、火を見るよりも明らかだ。もはやジジイの戯言だもの。そうなるのも当然じゃ……へへへへへ。
それが初見での感想だった。けれど、トゲのように引っかかる何かがあった。綺麗ごとでは済まされない、目に見えぬ何かを感じた。翌日、背筋を伸ばして見ようと思った。ながら見ではいけない……そう、思った。
物語を描く時。ひとつのセリフから全てが始まる。僕の場合は、全部そう。策略もなく、画策もない。知識もなくて賢くもない。そのセリフに向かって集約させる。そうなってしまうのだ。邂逅も、ブログ王も、ショート・ショートも……ブログに書けない事柄を、登場人物に喋らせているだけだ。少なからず、それは誰にでもあるのだろう……たぶん。
若ければ、それは希望とか主張と呼べるものがある。眩しいね、ピカピカだ。あと、30歳若けりゃな。もう一声、40歳若けりゃな……。それがとても羨ましい。年を重ねるごとに、作品には書き手の人生が嫌でも乗っかる。避けようのない現実が、覆いかぶさってしまうもの。ほんとうに、書き始めるのが遅すぎた。あれだ……時計のネジを巻き戻したいくらいに。
終盤。藤野がペンを走らせながら、描くのが好きじゃないとか、楽しくないとか、めんどうくさいとか、超地味だとか……「読むだけにしておいたほうがいいよね。描くもんじゃないよ」そう語るシーンがある。書き始めて分かる。それは、小説も同じだわ。身を削って、頭を捻って、心を擦って。それでも読まれることさえ少なくて……思ってた以上に、大変だ(汗)
「じゃ、藤野ちゃんは なんで 描いてるの?」
京本は問う。それは何かに打ち込む、鑑賞者へ向けての問いでもあった。そのあと流れる回想シーン。毎日、とても楽しかったです(笑) 少し前の現実と重なり───な……と、僕は思った。
そうだった、そうだよな。心のネジを巻いてもらった。
いい作品を見た。
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