金曜日。
バディから電話が入る。来週、二日ほど体を貸してほしいのだとか。僕はスケジュールに目を通す。目を通しながら日時を訊く。
「何曜日?」
「もう……体がだるくて、月曜日は休みたいんや。だから、火曜日と水曜日で構わんか?」
蚊の鳴くような声で言う。こりゃ、夏バテだな……と、僕は思って、今日もサヨリは元気です(笑)
「火、水ね? 間違いない?」
「お、おう……」
バディも年だ、仕事を休むのは構わないのだが、日時はカッチリしておかないと。僕は再確認を怠らない。これまで、幾度も泣かされてきたからだ。仕事の詳細を聞きながら、合間、合間で、僕は口を酸っぱくして確認を怠らない。
「火、水ね? 間違いない?」
「お、おう……」
口約束だけに“念には念を”というやつだ。
バディと仕事をする前夜。僕は様々な想定をイメージする。どんな動きをするのか分からない、バディ対策のためである。バディは何かを壊したら日当どころの騒ぎじゃない。見たこともない現場。行ったこともない場所。バディに聞いた情報だけを頼りにリハーサルを繰り返す。バディとの仕事の前夜は、いつだって、気が重い……若い衆と行けばいいのに……。
火曜日、当日、今朝……。
今朝は晴れやかな天気だった。神無月の冷えた空気が心地いい。会社に行くと、バディは掃き出し窓の前で立っていた。窓から差し込む朝の光が、後光にように眩しく見えた。ヒヨコのような頭の産毛。それが朝日に照らされ黄金色に輝いて見えた。その神々しい姿に───仏様……不覚にも、そんなふうに僕には見えた。
「おはよう」
「おはよう」
しっかりと休養が取れたのだろう。バディの声に張り戻った。いつもより、背筋が伸びているようにも見えた。そして、バディの言葉が僕の心を突き刺した。大型テレビニュースでは、株価暴落、石破ショックの話題をしている。僕は株などやらないのだから、何ら問題などないけれど……。
「こんな早くに、どうした?」
「あ? おめぇが、俺を呼んだんじゃねーか?!」
こっちは、バディショックであった。
仏の顔も三度まで。この場で、貴様を仏にしてやろうか? と、一瞬思う。
予定が一日ずれてしまった。今日は別の仕事を入れるとして……木曜日以降のスケジュール変更が面倒くさい。余計な仕事が増えた。少子高齢化社会では、こんなことも日常だ。今回は、記事ネタにさせてもらうけれども、次回はきっちり。キャンセル料金を請求しまっせ(笑)
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