───もう、分からん!。
自家菜園でのイノシシ対策、実は簡単である。強固なバリケードを張り巡らせれば、たとえ巨人だって防ぐ事は可能なのだ。だがしかし、そこには大きな壁が立ちはだかる。
───防衛費である。
そんな金は何処にも無い、逆立ちしたって出きやしない。最小の予算で最大の効果。畑の真ん中で毎日悩む。畑全長40メートル、ぐるりと網が張られているけれど、支柱が竹では頼りない。
───イノシシ相手に竹槍って…。
支柱間隔を測ってみると、その間隔は2メートルだった。周りの畑を調査すると、この辺り一帯ではそれが常識のサイズようである。2メートル間隔に鉄筋を打ち込み、ワイヤーメッシュ(格子状の鉄の網)をステンの針金で固定する。鉄筋1本400円、ワイヤーメッシュ1枚500円。ざっくりと3〜4万円、それが僕の畑の防衛費。
───それは無理、スクーター買ったからな。
頑張っても出せる予算は2万円まで。
それ以上は舌も出ない、ペンペン草すら残らない。既存の網を生かす他に道は無い。古くなった網だけど、そう易々とイノシシが突破出来るとも思えない強度があった。だったら予算のウエイトをかけるパーツは支柱。つまり、竹を鉄筋に交換がベストな策。
───2メートル間隔を1メートルにすれば、更に良いんじゃね?。
この考え、割とイケそうな気がした。
メジャー片手に畑の中をブラタモリしていると、背後からただならぬ視線を感じた。振り返ると桃畑の師匠がニヤニヤ笑って僕を見ている。ユンボでジャガイモを掘ったあの人である。いつも神出鬼没である。
───なんしょんな?。
かくかくしかじか…でも金の力は使えねぇ!。
鉄筋とかワイヤーメッシュとか、納屋で余ってるのを持って来るかと期待する。けれども世の中そんなに甘くない。その代わりに知恵を授かった。
───ホーム・センターに行ったら、軽くて設置しやすい網がある。そんなに高くないからそれ買ってみな。元気があればバカでも出来る。
ホーム・センターへ行ってみると、謎の網の名称が分かった。アニマルフェンスである。1.2×20メートルで6千円なら悪くない。専用支柱は高額なので鉄筋で代用。流石、マスターピーチ。口の悪さも伊達じゃない。運搬、設置、心の強度。作業効率ならアニマルフェンスに軍配は上がる。とにかく軽い。そして、安いは正義である。
イノシシ防衛の方向性が固り、外柵イメージが明確になった。
───現状の網を張り直し、後方からアニマルフェンスでW防御。
これで行こう。
翌日、お礼を兼ねてホーム・センターで見た事を詳しくマスター・ピーチに報告した。その1分後、僕は有り難いお言葉を頂く事になる。たぶん、一生忘れない言葉だ。
───イノシシだって、タヌキだって、アライグマだって、ハクビシンも…か…。奴らは美味いスイカを食べに来るもんだ。だから、お前の畑は心配要らねぇ。な〜んの心配も要らねぇ〜よ。害獣ってのは、美味いスイカだけを食べに来るんだから!。お前の畑は大丈夫(笑)。
───スイカの花言葉はずっしりしたもの。
これが、ずっしりした心の煽り運転というやつか。美味いスイカ作ったる!。
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