幼女と老猫、初顔合わせ

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散歩に誘う猫
うちの猫の話

――まさこぉ~、行こかね。

 これは、慌ただしくゴールデンウィークも過ぎ去り、畑のアイドル玉ねぎ「まさこ」の収穫を終えた頃の話である。

 畑の物干し竿が限界を向かえた。早生玉ねぎの「じゅんこ」はそれぞれの行き先に落ち着いたものの、「ももえ」100個がそろそろヤバい。依然として、「まさこ」は沈黙を続ける。抜いたばかりの玉ねぎを袋に入れて、僕はユッキーの店に足を運んだ。増殖し過ぎたアイドルのお裾分けに。

――サヨリさんはお留守番ね(笑)。

 このところ、愛猫サヨリは絶好調である。寝ない、動く、喰らう。空回りも動いてる証拠とばかりに活動的であった。僕が出ている間は、ドアの前で鳴いているらしい。事務所から出るたび、後ろ髪を引かれる毎日である。

「今日は許さにゃい!」

 異変を察したサヨリが先手を打つ。お前、賢いな。ドアの前に座り込み、テコでも動かない意気込みを見せた。そして切り札の切なそうな目で僕を見上げる。可愛いの暴力であった。

「散歩……行く?」

 僕がリードを見せると、うちのニャンコはどうすると思う?。僕の足下まで駆けよってから座るのだ。その後、首を伸ばしてセッティングを待つ。リードを付けると、お次はドアの前で鼻息を荒げたトラになる。期待と、希望に胸を膨らませたトラが僕を睨む。めっちゃ見てるわ、こいつ……。

――玉ねぎを持って行くだけなのに。

 歩かせたら時間が掛かる。交通量が多いから危なくも感じる。そこは、抱っこひもの出番である。腕を骨折したときに使う三角巾のような形状で簡単な作りの布っ切れなのに優れもの。

 素早く抱きかかえてお姫さま抱っこ。抱っこひもの中で、辺りをキョロキョロと見渡す仕草が可愛い。右手に玉ねぎ入りの袋を持って片道5分の大冒険が始まった。

 ユッキーの店で玉ねぎを手渡して、いつもの如く世間話に花を咲かせる。時折、抱っこひもの中のサヨリは、僕とユッキーの顔を交互に見ていた。

「ただいまぁ~」

 ユッキーのお孫ちゃんの帰還である。小さな苺柄の長靴を履いて、ばぁばと雨の中を帰ってきた。

「ねこちゃん……」

 野良猫は見慣れているようだけれど、家猫は初めてのご様子。そこから可愛いの暴力VS可愛いの暴力が火花を散らす。

「かわいい、かわいい、かわいい、かわいい……」

 可愛いのシャワーを浴び続けるサヨリさん。おいお前、今日は人気者だな(笑)。抱っこひもから小さな頭と右手を出して、『かわいい』の度に反応している。

「かわいい、かわいい、かわいい、かわいい……」

 『かわいい』はまだまだ続く。もうね、ボンカレー1年分プレゼントくらいの『かわいい』を幼女にもらった。『かわいい』に疲れた幼女は休憩に入る。沈黙の後の第一声がコレである。

「かわいいからねぇ、ねこちゃん、つれてかえる(笑)」

 随分な提案に、う~ん、それはちょっと。サヨリは僕を見上げて満更でもなさそうな顔をしている。サヨリちゃん、2、3日泊まってくかい?。泣きわめいても知らないけれど(汗)。

 元気を充填した幼女から再び『かわいい』の連呼が始まった。

「撫で撫でしてみる?」

 膝を曲げて、僕は幼女に猫の頭を近づけた。すると、『でも、私ら出会ったばっかだし……』の勢いで三歩後退。可愛いけれど近づくのは怖いのだろう。何度かチャレンジしてみたのだけれど、幼女の手のひらがサヨリに触れる事は一度も無かった。

――サヨリさんとの帰り道、おみやにうどんとぽたぽた焼き。

 これから先、愛猫を連れて行く事もあるだろう。お孫ちゃん、いつの日か猫の頭を撫でられたら良いね。お次のチャンスは、男爵芋が出来た頃?。運が良ければ、ズッキーニや、キュウリや、ナスが採れているかも知れないな。

 期待せずに待っててねん(笑)。

コメント

  1. なんか、ジーンと泣けてきました

    • 初めまして(笑)。読んで頂きありがとうございました。

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