ツクヨの父の日
今日は、六月第三日曜日───全国的に父の日である。 父の日だからって、我が家の夕食はいつもどおりだ。かろうじて、母の日の名残りはあるのだが、父の日はごくありふれた日曜日。けれどツクヨが我が家の一員となった今、状況が少し変わった。ツクヨには父と呼べる存在がいない。それを気遣い、お茶の間をピリピリさせていたのは、俺とオトンだけであった……。 口チャックにテレビまで消して、父の日情報を遮断する。父の日は───ツクヨに禁句だ。 いつものように夕食を始めると、思い出したように、ツクヨがテテテと部屋に戻っていった。条件反射で俺は訊く。「アヤ姉、ツクヨは?」 トボけた感じでアヤ姉が答える。「そっか、今日は父...