九十分間の奇跡
彼の顔は青ざめていた。 本日投稿予定のショート・ショート。その準備が整わない。ブログ公開時間まで、九十分を切っている。なのに一行も書けていない。てか、書くことすら決めていないふうに見える。ザ・ピンチ! 絶体絶命とはこのことである。「やるっきゃねぇーんだよ」 そう呟くと、彼はキーボードに指を乗せた。画面を睨むこと三分経過。画面は三分前と同じまま。一文字も打ち込まれていない。空白すらも何もない。 わたしは彼を見守るだけ。わたしには、それしかできない。わたしは一年前から、これと同じ光景を何度も見守った。彼の毎日は、時間とのチキンラン。それが彼のライフスタイルになっていた。それでも彼は、間一髪で切り抜...