2024-07-20

ショート・ショート

明晰夢(昭和)

二度目の人生、最初の朝。 俺は自転車の前で絶句した。そうだった、そうだった。この自転車は……確かに俺のだ。「かーっ! これで学校に行けってか?」 六段変速の黒いボディ。ダブルヘッドライト、テールランプ、ブレーキランプ、方向指示機まで完全装備。そう言えば聞こえもいい。だがこれは、スーパーカー自転車(ジュニア自転車)なのである。隣に佇たたずむ弟の自転車は、ランボルギーニ・カウンタックをイメージしたタイプ。ボタンを押すと隠れたライトがギュイーンと上がるタイプである。「記憶からは薄くなったが、これはもう……デコデコのデコチャリだな」 これでも中身は還暦かんれき前。このデコチャリで中学へ行くか? しばら...