明晰夢(読書部)
一夜にして……という言葉がある。それが今朝の俺だった。教室に入った途端、俺に向けられた熱視線に歩みが止まる。ミュージシャンでもなく、アイドルでもなく、漫才師でもなく……言うなれば、ユリ・ゲラー(超能力者)でも見るような、好奇心たっぷりの眼差しだ───おい、そこの委員長。どうして俺に向かってルービック・キューブを振っている? 俺の隣のピンクメガネが、してやったりの顔をする。お前か? お前なんだな? 俺と本屋で別れた後。塾で六面揃ったルービック・キューブをひけらかしたか? 六面完成……俺の中学では、初の快挙。じっくりと一晩寝かせた噂に、尾びれ背びれがくっ付いて、登校中に広まった……と、いうことか...