2024-08

ショート・ショート

明晰夢(読書部)

一夜にして……という言葉がある。それが今朝の俺だった。教室に入った途端、俺に向けられた熱視線に歩みが止まる。ミュージシャンでもなく、アイドルでもなく、漫才師でもなく……言うなれば、ユリ・ゲラー(超能力者)でも見るような、好奇心たっぷりの眼差しだ───おい、そこの委員長。どうして俺に向かってルービック・キューブを振っている?  俺の隣のピンクメガネが、してやったりの顔をする。お前か? お前なんだな? 俺と本屋で別れた後。塾で六面揃ったルービック・キューブをひけらかしたか? 六面完成……俺の中学では、初の快挙。じっくりと一晩寝かせた噂に、尾びれ背びれがくっ付いて、登校中に広まった……と、いうことか...
猫の話

サヨリの近況報告をば

2024年の8月は、猛暑で始まり台風で終わる。  最大級とか暴風雨だとか、心の準備に余念はないのだが、空は台風の気配を感じさせない。天を仰ぐと青空までもが顔を出す。これが、嵐の前の静けさか……。30日午前6時。不安の朝が幕を開けた。  お昼の高松は雨模様。重力に従って風の影響を受けることなく、雨粒は真上から真下へと落下している。それは風の弱さを示唆しているのだが、その静けさが、余計に不安を助長させる。心配事の九割は、現実には起こらない。そんな最新研究報告もあるけれど、今宵の夜勤は地獄だな……未来の危険を察して、お昼を使って記事を書く。台風の影響で何かあれば、ブログどころの話じゃない。自動投稿で...
小説の話

きょう何食べた?

〝フックをかける〟という言葉がある。ビジネストークで使う言葉らしいのだが、ブログや小説の世界では、読者に興味を惹かせるパワーワードの意味を持つ。お笑いなら〝つかみ〟といった感じだろうか?  話は変わるが、同僚ワーちゃんが猛烈にプッシュしている作品がある。それは「うさぎドロップ」と「きょう何食べた?」の二作品。プッシュされてから一年後。うさぎドロップを鑑賞した。けれど、きょう何食べた? を見ることはなかった。見るつもりがなかったからだ。 「俺、BLは……」 「旦那も同じこと言って、見てくれないのよねぇ。でも、そういうのじゃないから! Amazonプライムで見られるから!」 「お前だって、トッケビ...
猫の話

飼い猫信長と野良猫家康(ケイテイ)

「おい、覇権(家康)と絶望(オリク)が睨み合ってるぞ!」 「えーーー! 家康の現役復帰かっ!天地がひっくり返るぞ!」 「世界地図が塗り替えられる……」  信長を挟んで睨み合う家康とオリク。地を這うような低い姿勢の家康とは対象的に、後ろ足で立ち上がるオリクの顔には、余裕の笑みが浮かんでいる。体格と経験値なら老兵家康、勢いと持久力なら女帝オリク。猫の勢力図が書き換えられる戦いに、固唾を呑んで動向をうかがうボス猫の群れ。もし仮に、家康が現役復帰を果たせば全てが変わる……。引退した今も尚、覇権の称号の影響力は健在であった……。 「おい。真ん中の茶トラの若造……あれ、なんだ?」 「家康の息子じゃねーか?...
小説の話

本屋に本が無かった日

久々に本屋に行くと、お目当ての本が何処にも無かった。  それは、よくある話である。でも、文豪と称される作家の作品なのですが? 誰もが知ってるタイトルですけど? それがとても、腑に落ちない。だって、そうでしょ? 三島と太宰だもの。いくら教養なき僕だとて、ふたりの名前だけなら知ってるよ。だからこそ、スーパーから〝かっぱえびせん〟が消滅したくらいの驚きだった───ホントに……無いの?  きっと、何年も昔からそうなのだろう。本は商品、売れてナンボ。本を並べるスペースだって、店からすればタダじゃない。その事情も理解している。でも……無いの? あると信じていただけに、少しガッカリした気分になった。学生時代...
小説の話

誰もが時間に追い詰められる

セリフが多いのか? それとも、無駄な描写が多いのか? 簡潔に2000文字を目標に、文章を短くしようと試みる。けれど、一行たりとも短くならない。むしろ、何処までも伸びそうで、今日もサヨリは元気です(汗)  連絡メールなら、必要な要素だけを簡潔にまとめればいい。そうすることで、ミスも少なくできるし、ダイレクトに相手に要件を伝えられる。それはブログも同じである。簡潔に要点をまとめたブログが好まれる傾向にある。だから、僕のようにダラダラ書かない。とはいえ、思い出話とか、経験談を交えて記事を書くものだから、どうしたって、文字数が伸びてしまう。昨今では時短がブーム。ドラマでさえも、倍速で観るのだそうだ。誰...
ブログ王スピンオフ

のんちゃん親衛隊

ふたりで石あかりを歩いた夜。  俺は彼女の部屋で一夜を明かした。そして俺は、出会ってしまった。〝のんちゃん親衛隊〟と呼ばれる謎の組織と。それを語るには、時計の針を昨夜まで戻さねばならない……。 ───俺とのんは、いい感じだった……。  石の置物が並ぶ細道。それぞれが少しだけ、ほのかな灯あかりで道を照らす。休日はイベントで賑やかな石あかりロードも、平日の夜になると人はまばら。ひっそりと静まり返っている。俺の耳に聞こえるのは、リンリンと鳴る虫の音ねと、のんが歩く下駄の音。カランコロンの音色が心地良い。のんが奏かなでる音ならば、一生でも聞いていられる。のんが歩を進めるたびに、白い浴衣に描かれたひまわ...
ショート・ショート

明晰夢(勇者の覚醒)

───しまった!  本屋で手にした金閣寺(三島由紀夫)。レジ前で、それを買えない俺がいた。財布に10円玉が10枚しか入っていない……もう、最悪だ。頭を垂れたレジ前で、俺の右肩を誰かが叩く。若き体は感度良好! 首が右に向かって反応すると、ホッペに誰かの指が食い込んだ……痛い! その指が、ホッペの中でグイグイ動く───マジ、痛てぇ! 「こんな手に引っかかるなんて……まだまだ子どもね、ルービック師匠。この本、貸してあげるから。ルービック・キューブのやり方、教えてね」  クスクスと笑いながら、美藤夏夜びとうかよが俺の後ろに立っている。 「そうそう。これを貸してあげようかと思って、戻ってきちゃった」  ...
レビュー

スマホのアラームが止まらないのだが?

なんなんだよ、おめぇーは、よぉー!  ピコン♪……数分おきに、スマホから鳴るアラーム音。それが、ずっと続くものだから、苛立いらだつ気持ちが爆発した。せからしか! 滅多に出さない九州弁までもが飛び出して、今日もサヨリは元気です(笑)  アラーム音の原因は分かってる。スマホが雨に濡れたから。雨の中をバイクで走って、ポッケのスマホが濡れたのだ。USBセンサーがが水分に反応した結果、USBポート無効機能が作動した。アラームは、そのお知らせだ。それについての異論はない。だって、センサーが正常に作動している証拠だから。そこまでなら、腹も立たない……この動作は至極正しい。  USBポートの無効ボタンをタップ...
雑談

潮だまりの化け物

小学生時代。僕には、釣りエサを買った記憶がまるでない。  1970年代。オトンを含めた大人たちは、マムシとか、ゴカイだとか……財力に物を言わせ、釣具屋でエサを買っていたのだが、そんなの海に行けばナンボでも落ちていた。お金を出して、これ買うか? それがとても不思議だった。ちなみにマムシは、毒ヘビではなくて、平べったいミミズのような生き物だ。ゴカイは、青いミミズのような姿をしている。そのどちらの姿も気持ち悪い。 「これ(マムシ)、いくら?」  それとなく、知ってるオッサンにエサの値段を訊いたことがある。正確な価格は忘れたけれど、そんなの、プラッシーがナンボでも買えるやないか! 幼心に殺意を覚える金...
猫の話

飼い猫信長と野良猫家康(ボス猫オリク)

家康が海の木陰で涼んでいると、信長が少女を連れてやってくる。タマタマを消失してからというもの、信長は謎の少女と仲良しになっていた。 「家康ぅ~」 「光秀か……」 「信長じゃ!」  茶トラとキジトラ。二匹の猫が合流すると、女の子は何処かへ消えた……。 「誰や? あの女」 「ちゅーるちゃんや。いつも俺に、ちゅーるをくれるんやで」  家康の問いに、ニヤケ顔で信長は答えた。家康は知っている。猫も気まぐれだが、人間だって気まぐれだ。子どもなら尚のこと。さてさて……信長のちゅーるは、これから何日続くやら……。一ヶ月? いや、長くて一週間ってところだろう。人間の子どもは飽き性だから……。  それはそうと、信...
満月だからスイカの話

畑のスイカの試食感想(2024)

───満月だからスイカの話。  8月の満月は、アメリカの先住民たちから〝スタージョンムーン〟と呼ばれている。さらに、スーパームーンとブルームーンが重なる日。天を仰げば、今宵の月は大きく見えて、今日もサヨリは元気です(笑)  2024年8月12日、畑でスイカを収穫した。教科書どおりにスイカの蔓が、茶色くなったから食べ頃のはずだ。今年はパンパン割れたけれど、このスイカは割れてない。採ったスイカをサヨリに見せて、冷蔵庫で冷やすこと二日間。しっかり冷やしたスイカを食べよう。 「父ちゃん、大丈夫か? このスイカ、冷たいぞ?」  サヨリがスイカに興味を示す。猫はスイカを食べられるらしい……けれどお前はスイ...
畑の話

ブログの投稿ルールを少し変えます

〝ひろちゃん農園〟というYouTubeチャンネルがある。  コロナ禍で僕が畑を始めた頃。〝野菜の育て方〟で検索すると、検索結果にひろちゃんがいた。アラウンド・エイティーンのおばあちゃん(ひろちゃん)と、息子さんとの掛け合が面白い。プロ農家の動画は信頼もできる。それに加えて、テレビもネットも〝コロナ、コロナ〟と煽り立てるコロナ禍で、ほっこり動画は貴重だった。ひろちゃん動画を参考にしながら、僕は慣れない畑で汗を流し始める。すると、それに歓喜したのが友人だった。僕の頭の中はクエスチョンマークで一杯だ。 ───うわぁ、畑を始めたんですね(笑)  こっちが驚くほど、キャッキャとメールの文字が踊っている。...
ブログ王スピンオフ

石あかりロード

喫茶グリムのドア横の壁には、沢山のポスターが貼ってある。  スポーツ少年団の入会募集とか、猫探しのビラとか、地区の催し物のお知らせだとか……。お盆が近くなると、夏祭りのお知らせで壁一面が賑やかだ。花火大会の写真に、ツクヨの心が踊っていた。 「わたしのオッツー、お休みあるかな?」 ツクヨが乙女の瞳で、俺にプレッシャーをかけてくる。 「どうだろうねぇ……オッツーは警察学校だから、お盆休みはあると思うよ。ツクヨからメールで聞いてみたら?」  ツクヨにメールを促すと、キリッとした顔でツクヨは答えた。 「妻たるもの、主人の出世の妨さまたげになってはいけません!」  そこは、敬礼しながら言うんだな……。ツ...
ショート・ショート

明晰夢(ルービック師匠)

三度の人生を経験した女。キタゾエが俺に手を差し伸べる。その手には、日本の未来を変える道があった。しかし、俺にはやるべきことがある。ひとりの女の死を看取りたい。だから俺は、キタゾエが差し伸べた手をためらった。 「どうしたんだい? ウチじゃ不服かい?」  キタゾエが不満げに言う。 「そうじゃないんだ……そうじゃなくって……」  キタゾエの考えには賛同している。令和から昭和へ戻れば、誰もが賛同するだろう。若き肉体は無敵で、それを操る脳は無限の可能性を秘めている。でも、俺にはそれができなかった。 「悪いな……キタゾエ。俺、どうしても会いたい人がいるんだ。その人の命が尽きるまで、その人の側にいたいんだわ...
小説の話

ボッコちゃんに刺激を受けて

相棒からの小説は、先日書いた〝噂〟と書いてない〝ボッコちゃん〟だった。  どれだけ書籍に疎うとい僕でも、ボッコちゃんは知っている。だって、そうでしょ? 星新一先生は、ショート・ショートの神様だもの。知らない方が、どうかしている。風の便りに、ボッコちゃんのあらすじも知っていた。それ以外は何も知らない。ショート・ショートの醍醐味はオチである。その切れ味に刺激を受けるのも当然だった。ボッコちゃんを読みながら、自分のショート・ショートを考える。普段はシングルコアな脳なのに、こんなときだけマルチコアで、今日もサヨリは元気です(笑)  あー、もう───書く。  途中で本をパタリと閉じて、ポメラを開いてガリ...
雑談

Cocoonのスキン「みるらいと」

深夜、僕のブログを見ていた人はお気づきだろうか? 僕が夜な夜な、ブログデザインを弄いじくっていたことを……。なんかねー、男もブログもビジュアルが大事っしょ? 書いてる僕は手遅れだけれど、ブログだけでもスタイリッシュにならねーか? そんなぶらり散歩気分で、お盆の時間で色々試して、今日もサヨリは元気です(笑)  このブログはWordPressワードプレスと呼ばれるプログラムで構築している。つまりここは、はてなブログとかアメブロだとか、有名どころに属さない。小さな小さな個人ブログだ。たまに観光客が訪れる、離れ小島の野良ブログ。常連様の存在だけが、僕の心の支えです(汗)  だから、ちょっぴりリニューア...
猫の話

飼い猫信長と野良猫家康(タマタマが……)

まだまだ暑い日が続く……野良猫には厳しい季節だ。 「楽しそうに泳いでるやんか……」  いつもの海の木陰から、海水浴を楽しむ人々と飼い犬を眺めて、ため息を漏らす家康がいた。今日の食事と暑さしのぎ。それは当然として、もうひとつ。家康には気がかりがあった。お盆を目前に、信長が姿を見せなくなったのだ。鬱陶しく感じていた信長だが、会わずにいると気になるものだ。きっと信長は、クーラーの効いた涼しい部屋で、御主人様と甲子園やオリンピックを見ているのだろう……この暑さ、当然だ。家康はそう思っていたのだが、信長の身に大問題が起こっていた。 「家康ぅ!」 「久しぶりやな、光秀」  久々の信長に家康は嬉しかった。素...
ショート・ショート

八月十三日

今年のお盆休みもいつも通り、八月十四日から十六日までの三日間だ。うちの会社は、お役人さんや大手企業とは事情が違う。働き方改革の恩恵を受けるのは、ルールを作った彼らだけ。庶民はね、そんなにお休みなんてもらえないよぉ~。十三日のお盆の入りですら休めない。まったくね、考えるだけでイライラしちゃう。  わたしの家は母子家庭だ。離婚じゃなくて別居だった。お父ちゃんの住んでいるアパートは知っている。暇を見つけて、お父ちゃんの様子を見に行くけど、そのたびにお母ちゃんは不機嫌になる。でも、世界にひとりだけのお父ちゃんだから、できることはしてあげたいの。ご飯くらい……作ってあげてもいいじゃない。  一日の仕事を...
畑の話

困ったねぇ、畑が渇水!

水やりと少し雑草を刈ろうと思って、金曜日に畑に行った。お盆用のプリンスメロンもそろそろだろうて……うっしっし(笑) そんなぶらり散歩気分で、水やり準備の開始直後に地獄を見た。 ───水が……無い!  厳密に言えば───水源と繋がるホースが無い!  畑の水源は、隣の大きなため池である。ポンプで池の水を吸い上げて、畑に散水するシステムだ。うちの畑は近代的なのだが、肝心要のホースが見あたらない。つまり、水を供給できない状態だった(汗)  そもそも、僕には水の権限がない。無料で使わせていただく立場である。それ故に、たとえ水が切られたとて文句なんて言えやしない。ポンプに繋がれたホースの配置は、持ち主の手...