明晰夢(芥川)
放課後。 図書室で〝金閣寺〟を探していると、誰かが俺の背中をドスンと叩いた。呼吸を荒げたゴジラのような剣幕で、美藤が顔を近づける。この女……わけわからん。 「キューブぅ~! なんで勝手に教室を出たのよ! 探したでしょ? 約束したでしょ? 読書部を作ろうって! やる気がないなら返しなさいよ、イチゴ牛乳! ホント、これだから───男は信用できないつーの!」 お前、令和ならハラスメントな発言だぜ? 初夏の風吹く学び舎で、白昼夢でも見たのだろう。こりゃ、一足早い中二病だな……部員になると承諾した覚えはないのだが? 「オッケーした記憶はないし、イチゴ牛乳も返せない。俺がいつ、そんな約束した?」 俺...