
明晰夢(三島)
日曜日の図書室で古文書に目を通すサクラギは、古代の謎でも解くかのように、背筋を伸ばしてパイプ椅子に座っている。彼が放つ眼光が、俺には武術の達人のように見えた。その一方で、芥川あくたがわは受付デスクに足を乗せ、俺に足の裏を向けている。緊張と弛緩しかん。相反する読書スタイルを横目に、俺は裏が白紙の新聞広告の束を長机の上に置き、その上にBOXYのシャーペンを乗せた───いざ、金閣寺! 俺の準備は整った。 早朝六時を過ぎれば、剣道部、卓球部、バドミントン部、バレー部……体育館も部活の生徒で賑わい始め、グランドからの声出しの響きと相まって、図書室も平日さながらとなるのだが、俺の耳には何も届かなかった。こ...