ゴムとガム
「マサヨシーぃ! 今夜はシチューよ」「やったー!」 この会話を最後に、かあちゃんは死んだ。轢き逃げ……いや。オレに言わせりゃ、殺人だ。かあちゃんの葬儀が終わってすぐに、オレは犯人探しを始めた。それは、十九歳になった今でも続けている。「マー君。もし、犯人を見つけられたとして、ひとりで犯人を捕まえられるの? どう頑張っても、小学生が大人の腕力には勝てないわ。ねぇ? 捜査は警察に任せて、友だちが通ってる道場を覗いてみない? 犯人探しは、強くなってからでも遅くないわよ」 小学生のオレに、姉ちゃんが言う。オレの身を案じての提案だった。学校帰りに道場へ通っている間、オレの身は安全だ。姉ちゃんに引きずられる...