
今日もサヨリは元気です(笑)”034 再会”
034 再会―――空耳じゃない! 愛しい声が聞こえる向こうで、痩せた猫がうずくまっている。額にくっきりMの文字。サヨリと同じキジトラだ。近づくと、猫は俺を見上げて「ア、アっ」 と、鳴いた―――刹那に二十年前の記憶が蘇る。サヨリだ! 俺は、いても立ってもいられない。「抱っこ、しような」 俺が猫を抱き上げると、猫は俺の首の後ろに逃げ込んだ。俺の頬をペタペタ叩く、長い尻尾のその先が、カギのように曲がっている。何もかもが……サヨリだった。「天国で、着替えるのを忘れたかい? お前らしいな……サヨリさん」「ア、アっ」 その鳴き声が、俺には「ただいま」に聞こえた。猫の温もりと、毛触りと、小さな鼓動が首に伝わ...