2025-01-02

小説始めました

今日もサヨリは元気です(笑)”005 天国の待合所”

005 天国の待合所 ワシが乗る雷電と、子猫が乗った戦艦ヤマトは、並んで同じ野原に着陸した。どうやらここが、トビちゃんが暮らす場所らしい。 広い野原の真ん中に、大きな湖が広がっている。その水面を覗き込む人の姿もあった。ほとんどが人間じゃったが、ワシと同じ猫も、犬も、馬も、牛も……鳥や亀の姿もあった。「お疲れでした、サヨリさん。あそこが、わたしのお家です」 トビちゃんの指さす方に、大きな木が立っている。「ここは、朝も昼も夜だって。いつもぽかぽかで、雨が降ることもありません。だから、木がお家なの。ほら、みんなのお家も同じでしょ?」「ここは、どんな人が集まっておるのじゃ? さっきの様子じゃと、同じ目...
小説始めました

今日もサヨリは元気です(笑)”004 トビちゃん”

004 トビちゃん───死ぬるーぅぅぅ。絶対、死ぬーぅぅぅ!!!! ワシは今、虹の橋のてっぺんから、地の底に向かって落ちておる。チハルは地獄などないと言うておったが、このまま落ちれば地獄じゃろう。もしかすれば、チハルはあの世のペテン師じゃったのかもしれないのう……。 人間を信じたワシは、己の愚行に苦笑しながら、地の底へ向かって落ちていた……。「お待たせしましたぁ~。トビちゃんだよぉぉぉ」 ワシに向かって飛んでくる、雷電らいでんのコクピットの窓が大きく開く。そこにパイロット帽をかぶって、ゴーグルをかけた女の子が、両手を広げて立っておる。ワシは思った。トビちゃんは、チハルよりも美人じゃのぉ……。ゴ...
小説始めました

今日もサヨリは元気です(笑)”003 橋のてっぺん”

003 橋のてっぺん どれくらい走ったじゃろうか? 近いような、遠いような……。この橋のてっぺんから、トビちゃんの名を叫べばよいのじゃな。簡単じゃ。巨大な虹の袂たもとで、ワシは気合を入れ直し、足取りも軽く一気に駆けた――― こ、こ、こ。ここからワシが飛び降りるのか? 腰を屈かがめて橋の下を眺むれば、そこは底なしの沼のよう……猫でも分かる。落ちたら死ぬのに決まっておる。どれくらい考えたじゃろうか? ガタガタと震えながら、ワシの腰は引けておった。「やっぱりでしたか! サヨリさん。震えているじゃありませんか、へへへへへ」 ワシの背後にチハルがいた。なんて意地悪そうな笑顔なんじゃ……。「びっくりしたぞ...