
後ろの席の飛川さん〝001 悪しき習わし自己紹介〟
001 悪しき習わし自己紹介 あがり症のボクにとって、自己紹介とは学校の悪しき習わしだ。刹那にボクの顔面が、血の赤に染まるのが分かる……ドクドクと心臓が波打って、焼けるように顔が熱い。ボクの後ろの席から伝わる、背中の振動と相まって、生き地獄とはこのことだ。早くお家に帰りたい。ボクの気持ちなどつゆ知らず、己の才能と知識を見せびらかすように、クラスメイトの自分語りが始まった。こんなの、自己紹介という名の自慢大会じゃないか! 承認欲求の塊に、ボクの叫びは届かない……憂鬱だ。 ボクが通う明光中学は、県下有数の進学校である。中学生といえどもプライドは高く、夢のスケールもかなり大きい。医者、学者、官僚、弁...