
後ろの席の飛川さん〝005 こいつはダメだ〟
明光めいこう中学に入学してから早いもので、一週間が過ぎ去った。ボクは相変わらずのボッチだけれど、イジメなき世界は素晴らしい。「ねぇ、きいちゃん」 後ろの席の飛川ひかわさんは、いつも笑顔で問いかける。「きいちゃんは、小説を書かないの?」 教えてあげよう、飛川さん。小説家は、ハイリスクでローリターン。割に合わない職業なのだ。断言しよう。『オモロない』のひと言で、ボクの心は闇落ちすると……二発も喰らえば息絶える。「ボクには、そんな才能ないですからね。やっぱり、作家先生のサポートがしたいかな……」 飛川さんは残念そうな顔をするのだけれど、ボクにはボクの道がある。「小説を読むの───そんなに好きなら、何...