2025-04-28

小説始めました

後ろの席の飛川さん〝009 海には保護者同伴で行きましょう〟

ベンツを操るおっぱいゾンビが、広い国道から狭い山道へと進路を変えた。ボクらを乗せた赤いベンツだ。 山道に入った途端、車内がシーンと静まり返った。頑なに、ゾンビを否定するボクだとて、この沈黙には並々ならぬ恐怖を感じる。 あの飛川ひかわさんが、ひと言も喋らない……。 ボクは密かに腰を浮かせ、ドアのレバーに指をかけ、逃亡準備に取りかかる。こんなところで、喰われるものか! アップダウンを繰り返した山道の先で、ウインカーを上げ速度を落としたおっぱいゾンビが、小さな駐車場でエンジンを止めた。 船着き場、漁船、堤防……どうやら、目的地は漁港のようだ───人がいる! こんなうれしいことはない。車窓から見える人...