2025-05-11

小説の話

天国からの贈りもの

5月9日早朝。 いつものように仕事へ出掛け、いつもと変わらぬ挨拶を交わし、何食わぬ顔して桃の摘果の作業を始める。空を仰げば曇天で、僕の心と同じ色。心身ともにボロボロだ。作業開始から一時間後、大粒の雨が降りだした───今日の作業は、ここまでだ。 頬を濡らす雨粒は、天国からの贈りもの。 僕の体調が気がかりな、相棒が降らせた雨に違いない。東雲しののめのメールに相棒の訃報があった。相棒が死んだ……そんなの嘘だ! この時でさえ、現実を受け止められない僕がいた。 二年前、友人が他界した。ブログの読者、茶熊さんだ。彼女の望みは、僕の小説を読むことだった。彼女の死と望みを知らせてくれたのが相棒だった。それを伝...