2025-05-12

小説始めました

後ろの席の飛川さん〝015 見かけで人を判断してはいけません〟

十三本のロウソクの火を吹き消して、誕生日の歌をみんなで歌って、ケーキを切り分けると歓談かんだんタイムが始まった。 鼻の下を伸ばした飛川ひかわさんは、尾辻おつじさんにべったりだ。「いつも主人がお世話になっています。未来の妻の月読つくよです。ほほほほほ……」 お客さんに、微笑みかける飛川さん。隣で終始無言の広瀬さん。そして、お客さんの苦笑い。 ボクにとっては、何もかもが非日常で、実感がまるで湧かない。さしずめ、映画を観ているような感覚だ。ボクはというと、芸能人の記者会見のように、ゆきさんと近藤さんから、鬼のような質問攻めだ。「黄瀬きせ君、彼女とかいる?」「もう、アケミちゃん。そんなのハラスメントに...