2025-06-03

小説始めました

後ろの席の飛川さん〝021 誰にでも、口に出せないわけがある〟

ふたりきりだ…… 広瀬さんと、山の中でふたりきり。もしこれが、男子生徒の耳に入れば、どんなに羨むことだろう。だが、現実はそうでもない。むしろ逆。「黄瀬きせ君。これを着て」「うん」 手渡されるままにヤッケを着る。ナイロン製の薄手の生地で、胸にポッケがついている。「黄瀬君。これつけて」「はい」 手渡されるままに手袋をつける。ナイロン素材で、手のひら側には天然ゴムがコーティングされている。「黄瀬君。これ、かぶって」「え?」 頭からフェイスマスクをすっぽりかぶる。冷やっとして、かぶり心地は悪くない。でも、必要性を感じない。「じゃ、これ最後」 やっぱり大きなゴーグルだ……なんだこれ? こんなのアメコミヒ...