
後ろの席の飛川さん〝022 好きな人とふたりきりになるのは難しい〟
「ねぇ、きいちゃん」 クラスメイト飛川ひかわさんは、いつも笑顔で問いかける。飛川さんは、ボクを引きこもりの世界から、外の世界へ連れ出してくれた恩人だ。ボクは彼女に感謝の気持ちしかないのだが、今は恐怖だけしか感じない。 だって、そうだろ? ヘビを振り回しながら、自分に突進する少女がいれば、怖くてその場に立ちすくむ。誰だって、そうなるさ。「黄瀬きせ君。しっかりして、逃げるのよ」 広瀬さんの口数の多さが、ことの重大さを物語る。「きぃーちゃーん! にゃはははは」 その一方で、走るゾンビ化している飛川さん。ボクとの距離がドンドン縮む。「飛川さんが、どうしてヘビを?」 逃げる前に、それだけは知っておきたい...