2025-06-10

小説始めました

後ろの席の飛川さん〝023 ボクに女子の気持ちは分かりません〟

ボクに冷たい視線を浴びせる広瀬さんとは対照的に、先生はなんてお優しい人なのだろう。桃の木の根元に置かれたクーラーボックスを指さして「黄瀬きせ君も、好きなのどれか選びなよ」 ボクが、勝手に桃畑を抜け出したことには触れもせず、そう言ってくれるのだ。「先生、ありがとうございます」 クーラーボックスの蓋ふたを開くと、中にはコーヒー、紅茶、麦茶、スポーツドリンクにジュース……様々な飲み物が入っている。 ヘビ騒動でカラカラに乾いたボクの喉は、迷うことなく麦茶を選ぶ。それを一気に飲み干すと、ボクは地面に腰を下ろした。休憩だ。「さ、やろ」 間髪入れずに、広瀬さんの声がする。「え?」 いくらボクが若くても、少し...