
後ろの席の飛川さん〝024 素手で握ったおむすびは、魔法の調味料の味がする〟
桃畑の昼下がり。 桃の木陰に敷かれたシートの真ん中で、おにぎりを頬張る飛川ひかわさん。その隣でゆっくりと、二個目のおにぎりに手を伸ばす広瀬さん。「ふたりとも、やってんねぇ~」 ふたりの前に先生が座ると、そっとおしぼりを手渡す早川さん。その光景は、お花見を楽しむ家族のようだ。ボクはというと、シートの前に立ちすくむ。なんだか場違いな気がしたからだ。 こんなの、大縄飛びと同じじゃないか。あの輪の中へ入るタイミングがつかめない。「さぁ、さぁ。黄瀬きせ君も、座ってください。三縁さよりさんの隣にどうぞ」 ボクに向かって、手招きをする早川さん。なんて優しい人なんだ。それに比べて飛広とびひろコンビは、おにぎり...