サヨリは、無言で意思を伝える猫である。もの悲しい目で僕を見る。お皿の前に座れば腹が減った。冷蔵庫の前に座ればミルクが飲みたい。ドアの前に座れば外の景色を眺めたい。食事に口を付けなければ───皿を洗え……。こんな具合でいつまでも、静かに僕が気づくのを待つ猫だ。
いつの頃からだろうか? 夏に入ってからかもしれない。無口なサヨリが、また鳴くようになった。気になって、触ればニャー。触れなくてもニャー。いわゆる猫なで声ではなくて、低い声で謎の何かを主張するのだ。長年、事務所を守ってくれた猫である。彼の要望に応えたい意思はある。だから、小さな子どもと話すように、ご飯? お水? 抱っこ?……と問うのだけれど、どれもこれもが違うようだ。どこか怪我でもしているのかと、全身に手を当ててみても、痛いそぶりを見せなかった。こうなると、猫といえども不思議ちゃんだ。
猫や犬も人と同じで、高齢になるとボケるそうだ。サヨリも結構なお年寄りである。ボケて赤ちゃん返りでもしたのだろうか? もしかして……かまってちゃん? 知り合いのペットの中には、おむつが必要な子も増えてきた。昨今、猫の介護の話題も当たり前のように耳に入る……。やっぱ、ボケたか?
ゆーて、サヨリは自分で歩いて用を足す。トイレの中できっちり済ませる。用を済ませば、ザブンとプールの中で丸くなる。ご飯も普通に食べている。その食欲は旺盛だ。そう思えば、ボケたようでもないらしい。その証拠に、トイレの掃除を怠ると、そりゃ、結構な勢いでお怒りの素振りを見せるのだ。お皿もキレイに洗わないと、僕に向かって怒りのニャー。それは、正常のサインだと言えよう。
ニャーニャー鳴くので抱っこをすると、サヨリはジッと僕を見る。リクエストか? リクエストなのか? 僕がニャーと猫真似すると、サヨリはニャーと鳴き返す。もう一度やっても、サヨリの反応は同じだ。なんだよもう……猫との会話が成立している? そんな、錯覚すら覚えてしまう。これは試しだ、やってみよう。
犬の遠吠えのように、僕がニャーーーーっと声を上げると、サヨリはニャーーーーっと鳴いた。あーーーーっと言うと、あーーーーっと返す。いーーーーっと言うと、返事は無かった。耳も聞こえているようだし、目も見えているようで、今日もサヨリは元気です(笑)
九月になると、猫の体から大量に毛が抜ける。夏毛から冬毛に変わるのだ。これを換毛期と呼ぶのだけれど、この時期になると、念入りなブラッシングが必要となる。怠けると、抜け毛で事務所がえらいことになるからだ(汗) 顎と背中は許す。だが、しっぽと腹は許さねぇ! デスクの引き出しからクシを取り出すと、サヨリはウニャウニャと鳴きながら身を隠す。つまり、記憶力も判断力も正常だ。
このニャーは、きっとサヨリのマイブーム。このプレイに飽きると元に戻るのだろう。10号台風以降、過ごしやすい日が続く。あっという間に、寒い冬が来るのだろう。そして、この冬も、サヨリに膝を独占されるのだろう(笑)
今日は信長と家康の続きの日だけれど、今日は少し中休み。サヨリとの、ワチャワチャ話でした(笑)
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