「これ、昔から気になってたのぉ~。一年前だったかなぁ~、テレビで見たの。ハルヴァなんとか」
読書中、謎のタッパーがデスクに置かれた。ドスって感じの音がした。同僚ワーちゃん、久々の登場である。どうにかならんか? その、ファブルのヨウコさんみたいな話し方。
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「そ」
広瀬忍そのままに、返事を返す僕である。広瀬忍とは、四月から公開予定の小説の主要キャラの名前である。つまり現段階において、相棒しか知らない人物なのだ(汗)
「これ、ブログのネタにしてよぉ~。本ばっか、読まずにさぁ~。いっつも、本ばっか読んじゃってさぁ~。ほれ、記事ネタよぉ~……」
大きなお世話じゃ!
「それ……何?」
「知らん、業務スーパーで買った。ハルヴァなんとか」
謎のお菓子と曖昧な返事。謎が謎呼ぶ案件だけれど、タッパーにも似た透明な入れ物に貼られたシール。そこには「トルコの伝統的なお菓子」と書いてある。そっか、そっか。トルコのお菓子かぁ……ハルヴァ プレーン。トルコの場所さえ知らぬのに、お菓子の味が分かるはずもなく……
「どんな味がするんや? その、ハルヴァ何某」
「テレビの人は、おいしいて言うてたよぉ」
不味いと言う、テレビの人を僕は知らない。
「それ、誰?」
当然の質問である。
「さぁ……芸人さんちゃう?」
世の中に、ごまんと芸人さんがいるのだが?
「そうじゃなくて、外国のお菓子は激甘のイメージがあるんやんけ? その芸人さんつーのは、ふくよかな体格とか、華奢な人だとか。食べる人で印象が変わるやろが?」
もはや、ハルヴァ プレーンが茶色い砂糖の塊にしか見えない……。
「う~んと……忘れた。でも───書いて、書いて! ゴマだよ、ゴマ!」
その「行け、ピカチュウ!」みたいな言い方、止めてもらってもいいですか? まじまじとシールを読むと、嫌な文字が目に留まる。
「この……〝dog tat〟って、もしやだけれど、ハルヴァ何某とは、ドッグフードの類じゃあるまいね?」
ワーちゃんの家には、猫もいるが犬もいる。その危険性も……ある!
「う~ん、それは違うと思……う」
その、歯切れの悪い返事が嫌だ。目を皿のようにして、成分表を僕は読む……主にゴマと砂糖って感じ。にしても……とてつもない、カロリーだ。
「これ、100グラムあたり517キロカロリーもあるんだけど……つまり、1809.5キロカロリーを、僕に消化しろということか?」
「ほんとだねぇ~。これぇ、すごいねぇ~」
もはや丸投げ状態のワーちゃんである。
「おいしくなかったら、お口直しにポテコも食べてぇ~」
なんでポテコも? どこからポテコが? 昔から、言い出したら聞かない人だから。僕も諦めてチャレンジを試みる。
「まぁ、開けてみよう……固いなぁ、この蓋」
蓋を開けるとゴマの香りが部屋一面に広がって、僕の嗅覚を刺激した。こりゃ、ゴマ以外の何物でもない。隣にポテコを並べると、もはやこれは、スナック菓子と高野豆腐じゃないか?
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「まぁ、取りあえず……少しだけ」
スプーン一杯分だけすくって断面を見ると、なんら変わり映えしないビジュアルだった。冷たければ、業務用アイスクリームって感じもある。ざっくりとだけれど、これで100キロカロリー近くあるのだろう……物凄いエネルギー量に舌が引ける。テレビの人の言う通り、おいしければ……実に罪づくりな食べ物だ。
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これを口の中に放り込むと、ゴマの主張が実に強い。その後で砂糖の甘さ。強烈な甘さではなくて、普通に砂糖の味がした。この味は、子ども向けよりも大人向け。ポテコの塩味とも相性はいい。おいしいけれど、初めての味。そんな表現がしっくりする。ブラックコーヒーや抹茶との相性もよいだろう。カロリーを知らずして「はいどうぞ」と差し出されたのなら、三口くらいペロリだけれど、おひとりさまには荷が重い。食べすぎ注意の一品だった。
久々に顔を合わせたワーちゃんだからと、別の話を僕は振る。
「ところでさ、こっちに友だち来るけど……会う?」
何年もブロガーをやっていれば、そんな予定だって入るもの。ワーちゃんも知る人だから、一応だけれど誘ってみると
「友だちって、あの人かなぁ~?」
いくら僕でも、見ず知らずの人にワーちゃんを会わせやしない。そんな危険な真似などしない。
「そう、そう」
「会うぅ~!!!」
かかったな。
「だったら、お前の新車を出せよな。新車で観光地を巡るのじゃ!」
「えぇ~?」
どうしたよ。その、謀ったなみたいな困り顔。
「じゃ、会わないの? 別にいいけど」
「会うぅ~!!!」
これで、こっちの準備は整った。僕だって、ワーちゃんのごっつい新車に乗ったことないし。これからゆっくり、おもてなしのプランを立てようか(笑)
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