あなたをもっと知りたくて、１月３０日は３分間電話の日

───いつでも、どこでも、誰とでも。

小学生でも気軽に連絡が取り合える現代。時間の縛りも特に無い。そんな通信手段の元祖は手紙である。僕ら世代ならカナダから届くやつ。そんな手紙の歴史は古く奈良時代以前にまで遡る。そして、知らない誰かを求めるのならボトルメールが主流であった。手紙を書いて、瓶に入れて、海に流してじっと待つ。それが切っ掛けでゴールインしたカップルがいるとかいないとか。低確率の手間暇かけたプロセスなのに、彷徨の季節にロマンを感じていたのも不思議です。

───そこが昭和の世界である。

全国の皆様へリアルタイムに声を届ける電話の登場は文明開化の音以降から。みんな大好きインターネットは平成の世に入ってから。今では当たり前が８０年代では夢物語。だってそうでしょう？、トシちゃんだって高原のテレフォンボックスだったのだ。つまり、僕らの主力は黒電話。こいつの扱いが少々厄介なのである。ダイヤルを回すだけなのに、気合いと、勇気と、１０円玉が必修だった。これがわかるアナタ、そりゃもう、お友達です。

何が言いたいのかと言うと、

───明日、１月３０日は３分間電話の日です。

今さらそれ？、今どきそんなの需要ある？。大丈夫、大丈夫、好感度なんて要らねぇ～よ。このブログはお友達世代だけしか読まれてない。だから昭和話の遠慮も要らない。駅の伝言板にＸＹＺのメッセージ、ネットは吐息で動いて、電話の写真は2016年頃のサヨリちゃん。

───市内通話は３分１０円。

１９７０年（昭和４５年）、日本電信電話公社の市内通話が３分１０円に決められたのが１月３０日である。それ以前は利用時間に制限が無かったのが驚きだ。この制限は長電話防止のために設けられた。知ってる、それ、嘘でしょ？。そこだけを切り抜けば、電電公社のテイの良い値上げ策のように見えて至極当然。７０年当時のリアルを知らないが故に大きな誤解が生じるのだ。ほとんどの家庭に電話が無いなんて想像できる？。

７０年代の主流は共同電話と公衆電話であった。緑の電話は随分先で幼き僕らは糸電話。そりゃ、１０円玉１枚と引き換えに永遠に彼女とお話しできるのだ。飽きるまで友達と語らえるのだ。そんなのやるに決まってる。必然的に電話の前には長蛇の列で緊急連絡に使えない。そんな事情をひっくるめて電電公社にクレーム殺到。

それが３分１０円の経緯である。

その後、瞬く間に家庭に電話が普及する。８０年代に入ると電話の無い家の方が珍しくなった。なのに３分１０円は元に戻らず、そっちの方こそ何でなん？。そして向かえた８５年、電電公社からＮＴＴへ。そこから始まるイメージ戦略。人気絶頂だった薬師丸ひろ子のＣＭが流される。子猫をひざに長電話した少女の時代が幕を開けた。この楽曲を手掛けたのが松本隆と筒美京平。あの木綿のハンカチーフのゴールデンコンビ。今では男の願望だよと言われるのだろうけれど、当時のテレビの破壊力は絶大だった。ベルは８回数えて切るのが流行る。

固定電話は完全に僕らの生活の中に溶け込んでいた。海外ドラマのベッドの上、誰もが自分専用電話に憧れた。その最先端にあったのが親子電話であった。「昨日の夜な、長電話して親に怒られたわ」とか、「うちの親が男子からの電話繋いでくれんのよぉ」とか、「部屋に自分の電話欲しいわ」だとか、そんな愚痴みたいなものが制服と隣り合わせで飛び交う日常。

───若造だった我思う。

うちの電話も誰か鳴らして（悲）。