タマネギの畝立てと不思議な力(2022)

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タマネギの畝立てと不思議な力(2022)
自家菜園
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1週間ぶりの畑へ行くと、タマネギの苗が倒れてた。イチゴの葉もフニャフニャだ。仕事に追われた1週間。数日置きに雨が降った。こりゃ幸いだと思っていたのが裏目に出た。

───水切れですか?。それとも何かの病気かな?。

水を与えて様子を見よう。だってそうでしょう?、今日はタマネギの畝立て。ふた畝を立てる予定である。少なく見積もっても激動の2時間が待っている。

───それは、バイクで太った体へのペナルティ。

燃やせ、脂肪!。

水切れだったら帰る頃には復活するだろう。それは夏の経験則に基づいた判断であった。その後、4時間の長期戦となる未来と見知らぬご婦人の訪問がある事を、その時の僕は知る由も無かった。

───時と歳とは待ってくれない!。

じゅんこ、ももえ、まさこ、待ってろ!。

夏のスイカとサツマイモの場所にタマネギの畝を立てる。先ずはスイカの方から。一度スコップで耕したら土の塊を手のひらで揉む。土の塊を揉みほぐすためである。

その後、牡蠣殻石灰、牛糞、籾殻、元肥を順番に土に混ぜ込む。耕して手のひらで揉む行程はその都度行う。腕の筋肉がパンパン…にはならなかった。粘土細工で鍛えた筋肉がここで役立つとは、空回りも動いてる証拠だな。

───5回もやれば十分だろう。

1時間後、1畝目の土は良い感じでフカフカになり、腕は平気で腰はガタガタになる。風呂屋の3文字しか浮かばない。

ふたつ目の畝に差し掛かった頃。「こんにちは」と背中から声を掛けられた。振り返ると自転車のご婦人が立っていた。「○○に行くには、この道であっていますか?」

───迷子である。

「○○なら、もう少し頑張ったら着きますよ、自転車が重いでしょうが、がんばって」と返事を返す。いつもなら、ここで終わりの話だけれど、今日はここで終わらない。

「○○さんちはご存じですか?」と訊かれ、「○○さんちは知りません」と答える。そこから色々と話しかけられて、ついにその瞬間が訪れた。

───私には不思議な力があります。

でた。

年に1度ほど道ばたで聞かされる随分な告白である。だってほら、僕たち、まだ出会ったばっかで…。

どういうわけか、通りすがりのX-メンが僕の人生の中で多数登場する。不思議な力、霊が見える、何かを感じる、未来が見える…。初対面でそれはやめて、せめて友達になってから。

それが後に何かの物語や事件を起こす事など一度も無い。友達にも知り合いにもならない。ただ何事も無く通り過ぎて行くだけで害も無い。

だけれど、ねえ、見て、見て、今、僕は忙しそうでしょ?。てか、どうして、それ言う?。

───なんて言えやしない。

「私、頭の中で浮かんだ人の所へ行くと良いことが起こるんです。それで○○さんちへ向かうところなんです。もう、ご高齢ですからね、ご健在でしょうか?」

───「え?」

ごめんなさいね、あいみょんとゆきぽよの違いすら分からない僕に、そんな力は1ミリも無いです。

「たぶん、ご健在だと思いますよ。だから、こんな上り坂を歩いているのでしょう?」とかなんとか適当な言葉でその場を丸める。

───時と歳は待ってくれない…。

遠いお山の向こう側。お昼のチャイムが鳴り響き、今日もサヨリは元気です。

腹減った。

───やりたか無いけど続行だ。

ふたつ目の畝に取りかかる。やだなぁ、、、もう一回、、、。籾殻の場所は30mほど先なのだけれど、土嚢袋に詰めると20キロほどになって重い。けれどもバイクは使わない。30mくらいでバイクなんか使えない。ガソリン価格の高騰がそうさせた。

───テテテテテ、行きはヨイヨイ、帰りはトロトロ。

13時の作業終了予定が30分もオーバーである。疲れてんのな、俺。ペットボトルの五右衛門を飲んで息を整えて、もう一度、あの場所へ。

テテテテテとトロトロの3回目。

PSB(光合成細菌)が日照不足か不機嫌なのか知らないけれど元気ない。日々、白くなって越冬も厳しそう。そこで、PSBを籾殻に混ぜ込んで、追肥に使う方法をネット見つけた。だから、籾殻の山にPSBを混ぜ込んでみようと思った。念のため1本だけ残して。

───時刻は14時を回る。

お昼ご飯食べてない。

植え替えたバジルも唐辛子も元気ハツラツ。大根や長ネギも順調そのもの。萎れたタマネギの苗もイチゴも元気を取り戻した。ジャガイモに至っては暴れん坊将軍である。

───ジー…。

ふと、サツマイモの茎を埋め込んで、その上に籾殻をまき散らした畝が目に止まる。

───ここ、遊んでんのな。

その場所は、春はあけぽよまで放置のつもりだった。だけれど悪巧みが働く。悪巧みの粋を尽くし、そろそろ帰ろうとした時、あのご婦人から声を掛けられた。

「先ほどはありがとうございます。○○さん、ご健在でした」

「それは、ようございました。急な下り道ですから、お気を付けてお帰りくださいませ」

次に出会う不思議な力の持ち主はどんな人だろう。なんか、目の前でスプーンとか曲げてくれないかなぁ…。

タマネギの苗の植え付け2週間前の出来事である。

コメント

  1. お疲れ様でした。いろんな意味で‥。畑のアイドル達、とっても順調そう(笑)。土壌改良計画も、こんなにも進んでいたとは‥、すごいです!。今の畑を見たら、“草も生えない?、何それ?”‥な、変わりよう。地道な努力の賜物ですね。‥と、感激しつつも、気になるご婦人。そのレベルを不思議な力と言うのなら、雉虎さんの方が不思議な力は上ですよ。だってね、自分から話しかけて、奇妙な事を告ってる時点で、人を惹きつける不思議な力は雉虎さんの勝ち!ってね、そう思います。

    • ありがとうございます。緑肥として種を撒いたシロツメクサもしっかりと成長し、僕のイメージに近づきつつあり、次の春が待ち遠しく思えています。1年が過ぎるのが早いと言うけれど、今年は長い夏を過ごしたような気がします。色んな意味で充実していたからでしょうか?。知らない人に不思議話を切り出されるのは慣れっこですが、見ず知らずの僕に話されても…ねぇ。話かけやすいのかな?。

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