007 黒猫
天国の待合所は、地平線の先まで緑の絨毯で覆われていて、所々にお花が咲いていて、巨大な公園のようでした。広い湖を囲うように、所々に白いベンチが置かれています。待合所の人たちは、湖を眺めたり、談笑したり、空を眺めていたり、寝ていたり……。動物たちも自由に走り回っています。
トビちゃんの家から、歩いて三つ目のベンチの上に、チョコがぴょんと飛び乗りました。そして、姿勢を正してボクを見ます。僕はベンチの上のチョコを、下から見上げています。なんだか、見下されてる気がします。
「サヨっち、十蔵ちゃんを誤解してない?」
チョコが僕に言いました。
「誤解って?」
「ウチの十蔵ちゃんと、おたくのトビちゃんって子のことよ」
「……」
「バカなの? 十蔵ちゃんの恋人は、ヒカルちゃんよ。トビちゃんを好きになるなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないの!」
チョコが、ボクを睨みます。チョコの言い分に、ボクは反論しました。
「だって―――トビちゃんと十蔵さんは、美男美女じゃないかっ!」
僕の反論に、チョコが大きなため息を漏らしました。
「だ・か・ら! 十蔵ちゃんの恋人はヒカルちゃんなの。イケメンとマッチョの関係なのぉ! 男も女も関係ないの! そんなの超越しちゃった愛なのよ! まだ言わせる気?」
イケメンとマッチョ?
「……あ、そっか」
猫と違って、人間は複雑です。でも、よかった。ボクが安堵の顔になるのを確認すると、チョコがボクに質問しました。
「ところで、サヨっちとウチ。同じ日に死んだのかな?」
「たぶん、そうだと……思うけど?」
「四十九日。どうするの?」
四十九日……つまり、謎。ボクはチョコに質問を返します。
「四十九日って、何?」
「あら、この子。質問に、質問で返すのね? 呆れた子……」
ポカンと口を開けたまま、チョコがフリーズしています。だらしなく、口から舌が……出ているよ……。
「四十九日は決断の日よ。先達さんに聞いてない?」
「……聞いてない」
「サヨっちの先達さん……随分と仕事が雑なのね?」
チョコは呆れた顔で言いました。ボクはチハルの顔を思い浮かべて思います。確かにチハルは……雑かも?
コメント