008 四十九日
「はぁ……そこからですか? ほんと、あんたの先達さんは雑だわぁ」
チョコは、四十九日を知らないボクに、深いため息をつきました。ボクの先達さんは、雑なのだそうです……。
「ウチらはね、これからここで、四十九日を過ごすのよ。その間に、三つの選択肢から、ひとつだけ選ぶの」
「何を?」
「天国か、転生か、このままこの場に居残るか―――どれにするかを、決めるのよ」
チハルにそんなの聞いてない……。
「どうして?」
「それがここの決まりだからよ。ウチは天国に行くって決めてるの。生まれ変わっても、ヒカルちゃんに会える保証がないからよ。ここに残っても、その可能性は同じだし。で……サヨっちは、どうするつもり?」
「分からない……」
ウジウジしているボクの顔を見下ろして、チョコが口を開きます。それはそれは、気の毒そうな表情で。
「あなたを導いた先達さん。何も教えなかったのね? ウチの先達さんは、真っ白い猫だったの。とてもキレイなオッドアイ……憧れちゃった。サヨっちの先達さんは、どんな猫だった?」
「チハルがですか?」
「えっと……先達さんの名前はね。みーんな、チハルよ。ウチは、どんな猫でしたか? と、聞いています」
「えっと……中学生くらいのメガネをかけた、人間の女の子でしたけど……」
「やっば!」
チョコは血相を変えて、ベンチから飛び降りると、ペコペコとボクに頭を下げました。ボクには、何がなんだか分かりません。
「えぇ! 大往生って、ことですか? お、おみそれしました……サヨリさん。あのう……後で、サインとかもらってもいいですか? 自分、四十九日の間は、サヨリさまの舎弟になります!」
突然の手のひら返しに、チョコのピンクの肉球が見えるようです。でもボクは戸惑っています。大往生って……なんですか?
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