芋掘りの翌日。天日干ししたサツマイモを、土のう袋の中に入れて回収していると、畑の横に軽トラが止まった。親分だ。
「最近、畑、頑張ってるやん───暇か?」
んなわけない。
「芋掘りの後片づけで来ただけやから、暇とちゃうで。もう、暗くなるし……」
もう半時で日が暮れる。残った作業を急がねばっ!
「そっか、手伝って」
なんでやねん? 親分は、僕の話なんて聞いちゃいない。
「何を?」
「稲刈りじゃ!」
その笑顔、ぜったい嘘だ。
「あ、そうだ。柿いるか?」
女子高生の会話かっ? てくらい話題が変わる。
「それは……いる」
柿は欲しい。だって、血圧を下げるから……自分で買うことなんてないけれど、くれるとなれば、是非にでも(笑)
「何個いる? 1個、2個、3個……」
「じゃ、5個」
僕がイメージしている柿であるのなら、5個もあれば十分だ。
「じゃ、採ってくるわ」
「え、今から?」
「今でしょ!」
え? その軽トラに、柿は乗っていないのね……。この感じだと、太陽の高さは走れメロスの終盤あたり。15分もすれば日が落ちる。ポットに種をまいたキャベツと白菜がいい感じに育っていて、畝にこれを植えつけて防虫ネットを施せば、今日のミッションは終了だ。キャベツと白菜の苗が共に5個づつ、テキパキやれば問題ない。
畝の上の草マルチ。それを別の畝に移動させ、マルチを剥いだ畝の南端からキャベツを植える。北端からは白菜を植えつける。この両者、いつかはどこかで交わるけれど、次の苗の準備をしていない。キャベツと白菜は、冬季のちょっとしたお遊びだ。
キャベツは、収穫した茎から新たなキャベツが育つという。それが、数回可能だとも聞いている。ちょっとそれが気になって、キャベツのついでに白菜も……って感じである。なんかもう、葉野菜は上手にできない。上手く作れた試しがない(汗)
にしても……メロスよ柿はどうなった? 待てど暮らせどメロスは来ない。その間にも陽が落ちて、どんどん空が暗くなる。王さまに処刑される前に、帰ろっか……その時、メロスが戻ってきた。
「これ、甘いんや」
スクーター荷台のカゴが、柿で満たされてゆくのだが……てか、実が青い!
「それ、渋柿じゃね?」
「なんでや?」
「だって、青いじゃん。これ、さるかに合戦の渋柿の色しているじゃん? これって、熟成させるんな?」

御覧のとおりの色である。どう考えても甘いとは思えない。
「熟成いらんわ! うちの柿は青いんじゃ。すんごく甘い柿なんじゃ!」
どうにもこうにも、メロスの言葉が信じられない僕である。
「じゃぁ~さ。この柿、赤くなったらどうなんの?」
「ぶにゅぶにゅになって、柔らかくなるで」
なぁ、メロスぅ。なんで、そこで笑うのか? しめしめの流れですって顔して、メロスがカゴの中に柿を入れている。
「ほら、カゴが一杯になった!」
「あ、そうですか……」
僕のリクエストは5個のはずだが……どう見ても、青き柿が20個はある。
うーん……なんだかキツネにつままれた気分だけれど、まぁ、ここは讃岐だからタヌキだけれど。キツネもタヌキもそこまではしないだろう。取りあえず、メロスの青柿を持って帰った。
持って帰った風呂上り。試しに青い柿を食べてみた。映画だって小説だって、観たり読んだりしないうちに、批評するのは悪である。キチンと食べてから文句を言おう。切った柿の色は普通だが、渋柿だってこんな色をしている。えいっ! やっ! てな気分で、柿をガリっと齧ってみると……あっま! 脳がバグる。この甘さたるや、干し柿か? すぐさまネットで調べてみると、1995年に登録された「大秋」という品種らしかった。
次にメロスと会ったらお礼をしよう、来年の布石も兼ねて。とても悔しそうに「美味しかった。また、ちょうだい」というのがコツである。野菜も果物も悔しげに感想を語れば、来年もくれるものだから(笑)

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