読者だけに見える小説の世界

小説の話
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 少し前。輪華りんかのイメージに沿った画像を、ネットから探して僕にくれた読者がいた。輪華りんかとは、僕の短編小説〝邂逅〟で、未来に転生したヒロインの名だ。華やかに輪廻転生を遂げる少女。その思いを込めて〝輪華〟と命名した。初めて手掛けた小説なだけに、彼女への思い入れも深い───

 ネットを開けばAI時代。SNSやブログで、AIが生成した画像が毎日のように投稿される。現存する人物の画像に至っては、星の数ほど存在する。その中から読者が選んだ画像となれば、話の次元が大きく変わる。だって、そうでしょ? うちの子をイメージして選んでくれた画像なのだ。うれしいじゃん、作家冥利が天元突破してるじゃん(笑) 嫌でも笑顔がダダ漏れで、隣でサヨリも元気です(笑)

 日曜日。太宰の〝人間失格〟を読み終えてからメールを開くと、ブログ王メンバーをイメージした画像が届いている。メールには、ふたりの読者の解説が、会話形式で添えられていた。

 のんちゃんのブログ王を書いた当時。心理描写が中心で、外見描写は希少だった。イメージあれども、書く技量が僕にはなかった。登場人物に色が出たのは、スピンオフに入ってから。読者が選んだ画像にドキドキしないワケがない(汗)

 ゆきは安定感あるお姫様。読者は若い人だから、たぶん、気づいてないだろうけれど、高校時代のアケミは90年代の広末涼子。そっか、そっか。これ、アケミっぽいね(笑) ツクヨと忍は、2号とセブン。石あかりのポーズを取らせてフィギアにしたいな。にしても……オッツーを、よくぞここまでイメージしましたね……脱帽です(汗) 天パの三縁は可愛いい感じ。のんは、可愛かったり、艶っぽかったり。選ぶのに、未だ難航しているようである。

 10年前なら「いただきましたぁ~!」つーて。喜んでブログにペタリと貼り付ける場面である。とはいえ、昨今のネット事情を垣間見れば、チョットしたことで何が起こるか分からない。大切な読者が巻き込まれたら大変だ。だから、画像は僕のお楽しみということで。リアルな知人にだけ自慢をしよう(笑)

 のんと三縁、ツクヨとオッツー、アケミとゆき。謎の少年、桜木に至るまで。僕が描いた人物が、どんなふうに読者の目に映るのか? 書き手にとって、それは永遠の謎である。ところが、読者が選択した画像を見れば、それが手に取るように分かるのだ。読者だけに見える小説の世界……もう、これは───快感だ。

 文字の世界はイメージの世界。煮てください、焼いてください。書いた全ては読者の手の中。読み手の頭に浮かぶ人物像は、近しい人や、愛する人。推しのアイドルなどと重なって、無限の姿に変化する。別の読者が画像を選べば、また違った画像が選ばれるのだろう。でも、それがいい───それよりも何よりも、僕の小説が、何処かで誰かの話のタネになっている。それはとても凄いことだから(笑)

 そんなブログ王を書く前に、キャラ立てについての悩みがあった。小説を読むと、頭の中に映像が浮かぶ人がいる。でも、僕にはそんな便利な機能はない。そんな奴が、文字でイメージを伝えられるのか? 自分の中ではこうだけれど、それを決めるのは読者しかいない。まぁ、それは……普通に恐怖以外の何物でもない。一年間、思いつく限りを尽くしたけれど、その恐怖は影法師。ずっと、僕の背中に付いて回る。貞子なら、一週間でトドメを刺してくれるのに……この影法師は一生涯、僕の背中にへばり付くのだろう。

 画像を選んでくれて、見せてくれて、考察までもらって───それが、一筋の光となって。僕の背中にさし込むと、背中の影法師がスーッと薄くなった気がしました。感謝しかありません。元気出ました。ありがとうございます。

 次回の投稿をお楽しみに(笑)

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