今さらながら、読書を通して思うこと

小説の話
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 本を読む……なかなかどうして、これが辛い。今だからこそ書けるのだけれど、昨年末。相棒からの書籍が山積みだった。未読の山にため息が漏れた。この冊数……僕の寿命が尽きぬうちに読めるのか? そんな不安が脳裏を掠める。

 けれど、おざなりはできない。なおざりなどあり得ない。ブログを書いて、小説を書いて、本を読む。この道を歩むのなら、当然で、必然で、必須条件になるのだろう。にしても……読んでも読んでも本が減らないわけで。相棒に申し訳ねぇ~……そんな気持ちでいっぱいだった。

 文庫本一冊あたり、早くても一ヶ月を要する僕である。興味が薄れた本は、当然のように年をまたぐ。カメよりも遅読な速度でテクテクと読み始めた。それが、一昨年の初夏のこと。当時は、うん分からん! どれもこれもが古代文明の暗号だった(汗)

 そもそも、本に興味がない僕である。読書に集中できる時間も限られている。すぐに疲れて本を閉じる。これではダメだと本を開いて、また閉じる。去年までは、そんな感じで、開いては閉じての繰り返しだった。速く読むコツが分からない。書いてる漢字が読めやしない。読めても意味が分からない。だから時間ばかりが過ぎてゆく。なのに、容赦なく明日は来る。その結果、未読の本がデスクの上に積みあがる……これは、なんのスパイラル?

 転機が訪れたのは文豪だった。三島、太宰、芥川、夏目……もうね、勉強のつもりで読み始めたけれど、そもそも好きなジャンルじゃない。どこらへんのジャンルが好きかと問われれば、迷わず〝刃牙らへん〟と答える僕である。格闘系ならスイスイ読めちゃう。たぶん、予備知識があるからだろう。その実、恋愛系は大の苦手。文豪全般、読んでて辛い。だって、そうでしょ? 僕には縁遠い話で、耐性もゼロで、予備知識さえありゃしない(笑)

 あまつさえ、見たこともない熟語に加えて、見たこともない語彙の連続なのに、艶っぽい描写だけはすんなりと読める。艶っぽい描写は青春時代に習得済みだ。それはなぜか? 文豪の文章を読むのには、読むための勉強が必要だから。それを理解すると、ゴールが一気に遠のいて、言葉の意味を調べながら、トボトボと読み進める日々が続く。今、どこらへん? 分からへん(汗)

 どれくらい読んだだろうか? 文豪シリーズばかりを読んでいると、徐々に調べる手間が省けてきた。大多数の中学生が通る道を、還暦前が通過中(汗) それはまさにドラクエで、スライムばかりを狩ってる気分で、レベルが一向に上がらない。今思えば〝ぬののふく〟の時代が長かった……。

 それでも、世の中よくできたもので、いくばかの言葉をゲットする。〝たゆとうた〟のような、レアカードを引いたらどうするか? そりゃ、使ってみたい気分にもなるさ。小説やブログでチョイチョイ使って反応をうかがう……うーん、クリティカルではなさそうな?

 そんな日々を過ごして、おぼろげに自分の速度が見えたのは、今年に入ってからのことである。文豪小説以外なら、時速50、60ページ。一般の速度に追いついた(笑) たぶん、漢字や熟語で目が止まらなくなったからだろう。300ページならば、5、6時間で読める目途が立つ。すると、今まであったプレッシャーが軽減された。つまり、一冊あたりのゴールが見えた。この恩恵は実に大きい。本に対する尻込みのような、負の感覚がなくなったからだ。それもこれも、文豪からのスパルタ教育の賜物だろう。長い時間、ボコられたけれども(汗)

 読書をすれば、神作が書けるわけじゃない。読書をしなくても書ける人は書けるだろうし、読書をしたとて書けない人だっているだろう。ただ、色んなジャンルの小説を読みながら、相棒の意図が見えたような気がする。

 最初は言葉の勉強。加えて、語彙の蓄積とストーリーの運び方。これらの習得が、彼の目的だと考えていたけれど、のんのんと多種多様な本(ゲーテ詩集を含む)を読むと、読みにくい本は後回し、難しそうな本も後回し。自分の行動パターンが見えてくる。そこから導き出される回答は……読みやすい文章を心がける───だ。

 つまり、覚えた語彙はチラ見せ程度で。なんなら、雑誌の袋とじくらい程度かな? それは出会ってすぐに、相棒から受けた助言だけれど、当時は実感が湧かなった。凄い文章は凄いでしょ? だって、凄いもの。でも、そこじゃない。読書を通してようやっと、骨身に染みた結論だった。無名だもの、トリッキーは後回し。先ずは読んでもらわないと。そのためには読みやすく書かないと、誰からも読んでもらえない……。

 新作の四月分は仕上げている。五月分の修正分には手を付けていない。読書月間は、そうすることにしているからだ。今月は読書を続けて、五月分の修正は四月から。なんたって、まだまだ伸びしろばかりの僕だから、読めば読むほど何かが変わる。効率性を求めるのなら、放置も手段のひとつでしょ(笑)

 ちなみに〝のんのんと〟……これは、太宰治の「思い出」で見つけた東北地方のオノマトペ。もうね、本の山から掘り当てた、キラキラ輝くレアカード。その意味は〝勢いのよいさま〟とか〝深い川や大量の水がゆるやかに流れるさま〟らしいのだけれど、この文中に忍ばせた〝のんのんと〟。この使い方でよかろうか?(汗)

 

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