「私、録音されてるかも?」
───実話である。
これまた随分な告白ですな…。突然の先輩からのお悩み相談である。
「面白ければ記事にするよwww」
と半笑いで話を訊く。本当に録音されてるのなら、そりゃもう、お巡りさん案件じゃないの?。そう思いながらも耳を傾ける。
───Dr.コトーを耐え抜いた、わずか2時間後の出来事。
最近、リアル世界の密度が濃ゆくて困る。
このご時世である。そりゃ、気づかぬうちに恨みを買う事もあるでしょう。会話を録音される事もある。口は災いの元だから。
スマホにも録音機能があるように、Apple Watchにだって、Apple Watchのパチモンだって録音機能があるかも知れない。便利と隣り合わせの危険な道具が日常には溶け込んでいるのだ。胸ポッケに刺さったボールペンだって怪しいものである。
───そんな時代に僕らは生きている。
だれもかれもが皆同じ。別に特別な事じゃない。個人が全世界へ情報配信をする時代。YouTubeだって、SNSだって、ブログだってその道具。
だからこそ、言葉は選ぶが吉なのだ。
───壁に耳あり障子に目あり。
口から出たモノは引っ込まない。
飲み込んでも消せやしない。だから余計な事を口には出すな。口酸っぱくしてそれを言われた世代が僕らである。
とは言え、録音されているとすれば穏やかな話じゃない。てか、先輩がどんな悪さをしでかしたのか?。
───むしろそっちが気になった。
何気ないの言動の中に火種があったのに違いない。人生やってりゃそんな事もある。
けれど、後輩と言えども赤の他人。問題解決の自信ない。
───こわい、こわい、こわい。
こわい、こわい、が喧しい。もしかして、この状況を楽しんでない?。そんな突っ込みすら入れたくもなる。
家に盗聴器が仕掛けられたとかで無く、あからさまに録音されてるとかでも無く、何となくそんな気が…。それじゃ、話がまるで見えない。
僕にあるのは、不思議な力を持ってる人から話しかけられる程度の能力。その程度じゃ、到底太刀打ちなど出来やしない。
───もしかして…。
脳裏を過るえん罪の陰。
いわゆるスペクタクルな勘違い。(スペクタクルは絶賛お気に入り中の言葉である)これ、割と正解かも知れない。録音されるなんて余程の事が無い限りあり得ない。先輩の気のせいじゃないの?。こわい、こわいの向こう側、僕の疑いは先輩へと向けられで、今日もサヨリは元気です。
奥歯に支えたような断片的な情報から、何を悟れと言うのだろう。一を知って十を知れ?。そんな便利な機能は僕には無い。てか、妙に会話がズレてる気がする。いちいち会話が噛み合わないのだ。
だから気の利いたアドバイスも浮かばない。会話を録音されている気がするのなら、後で困る事さえ言わなければ良いだけだ。
───やっぱり、お巡りさん行く?。
「トラクターが田んぼで事故りました」くらいの困り顔。最初から情報の再構築を試みる。もしかしたら、聞き漏らしがあるかも知れない。現場百回。もう一度、訊き直そう。
「録音されてるってどうして分かるの?」
「そんな気がする…」
「知ってる人?」
「そう」
「だったら直接聞くか?」
「それは困る」
僕に求めているのは何ですか?。聞くか?、聞くだけで良いのか?。話を聞いたらスッキリして気が晴れるのか?。聞いてるこっちがモヤモヤする。
話が全く見えて来ない。出口の無いトンネルに、状況を整理すべく再度原点に立ち返る。
「誰か知らんけど、会話を録音されてるんだよね?」
「え?」
「ロ・ク・オ・ンされてんだよね?」
「違うよ」
「は?」
「ロック・オンだよ!、いわゆる恋のロックオン」
───誰かこの人、今すぐ打ち落としてやってくれ。
「ロック・オンてそっちの話?。だって、ほらもう、僕ら、五十路過ぎちゃってるじゃん?。それにそっちは管轄外だし」
「こわくね?」
───真面目に聞いて損した気分。
「良いネタもらった、ブログに書くわwww」
「ヤダぁ、もう、本当に?www」
「いや、マジで」
「録音=盗聴」のワードに犯罪臭を感じた僕の宇宙スケールの勘違い。
───モテ自慢か?www。
コメント
犬のお巡りさんだって、困ってしまってワンワン、ワワン‥♪な事件。迷子の子猫ちゃんは恋の迷子ですか?。恋の迷宮事とはねぇ。とりあえず火遊び厳禁、火傷と火種に注意‥とか?。花盛りの先輩、とても素敵な方なのでしょうね。
そうですねぇ、道を歩いていると振り返られる女性の部類の人でしたからね。女子大生ブーム時代の女子大生。男の扱いも手慣れたものでしょう。だからこそ、「それ、自慢か?」と問い直したいのです(笑)。