小説始めました

今日もサヨリは元気です(笑)”000 出会いと別れ”

000 出会いと別れ―――猫は飼い主を選んで姿を現す。飼い主に寄り添い、支え、癒やし……その短い生涯を終える。飼い主から、深き愛情を受けた猫は、毛皮を着替えて転生し、再び飼い主の前に現れるという……。「ア、アっ」 夏の雨の日、夏期講習の帰り道。俺は猫に呼び止められた。猫ってのは昔から「ニャー」って泣くもんじゃねーの? その独特な鳴き声に、俺は心底驚いた。くっきりと猫の額に描かれた〝M〟の文字も個性的。たぶんこの柄は、キジトラだったと記憶している。猫は俺に近づくと、足元に顎あごを擦こすりつけ、俺を見上げてを繰り返す―――その仕草に、俺の心臓がたゆとうた……「うちの子に、なっちゃう?」 猫は大きな...
小説の話

今さらながら、読書を通して思うこと

本を読む……なかなかどうして、これが辛い。今だからこそ書けるのだけれど、昨年末。相棒からの書籍が山積みだった。未読の山にため息が漏れた。この冊数……僕の寿命が尽きぬうちに読めるのか? そんな不安が脳裏を掠める。 けれど、おざなりはできない。なおざりなどあり得ない。ブログを書いて、小説を書いて、本を読む。この道を歩むのなら、当然で、必然で、必須条件になるのだろう。にしても……読んでも読んでも本が減らないわけで。相棒に申し訳ねぇ~……そんな気持ちでいっぱいだった。 文庫本一冊あたり、早くても一ヶ月を要する僕である。興味が薄れた本は、当然のように年をまたぐ。カメよりも遅読な速度でテクテクと読み始めた...
畑の話

夏野菜の土作り(2025)

今日は、全国的に春分の日である。 自然をたたえ生物をいつくしむ日に、夏野菜の準備をするのもおつなもの。午後から畝にすき込む鶏糞を買いに、最寄りのホムセンへ出掛けたのだが……致命的なミスを僕は犯した───ポッケに入れたはずの財布がないじゃないか! お金がないのだから鶏糞が買えなくて、今日はやけに道が混んでいて、引き返すのが億劫で、いっそのこと、今日の作業を中止にしよう! そんな、おざなりな……渋々、とんぼ返りで財布を探して、ようやく畑に到着したのが午後三時。なんつーか、畝が三つに笹の根を駆除する予定だけれど、二時間しか時間が取れない。気合を入れてギアを上げて、やれるだけやってみよう。さりとてこの...
畑の話

ホムセンで見つけた茄子の苗

月曜日、本を読んでいると謎のめまいに襲われた。グルグルと天井が回って立ってられない……。ふと〝脳血栓〟の文字が頭に浮かぶ。それを考える年齢でもある。でも、そうでもない気もするのだが?───推しの子か? 推しの子なんだな? 心当たりがあるとすれば〝推しの子〟だ。日曜日、コミックス全16巻と小説版(二冊)の一気読みには、自分でも無茶があると思っていた。薄いからという理由だけで、春琴抄(谷崎潤一郎)まで読んだのだから、これまでの経験上、常軌を逸する行動だったのは明らかだ。知恵熱ならぬ知恵めまい。アクアマリンに、めまいがしたとて当然だろう。アイドルは、人を酔わせてナンボだし。 けれど、原因はまったく別...
畑の話

よつぼし苺の花が咲く(2025)

2025年3月14日(金)……世間では、ホワイトデーと呼ばれる日であるらしいのだが、特別なことなど何もなく、気になるのは明日からの雨。暖かいのと畑の具合が気になって、仕事終わりに畑に寄ると、ホトケノザが花満開! この世に大切なのは愛し合うことだけとばかりに、春の風におしべとめしべが揺れている。 それはいいけど、松崎かっ? ってくらい、茂りすぎ。ホトケノザの勢いに、マンバ(高菜)の成長が負けそうだ───ちょっとだけでも、間引かなければ! 明日と明後日は雨予報。雨の日に畑を弄るのは、一般的によろしくないと言われている。湿った畑の上を歩くと、土を練った状態になって土壌が固くなるからだ。つまり、今日を...
小説の話

谷崎潤一郎の猫の描写が〝猫あるある〟の連続で。この人、めっちゃ猫好きじゃん!

夏目漱石は、一八六七年生まれって……慶応じゃね? 江戸じゃん! 夏目漱石の生まれ年が、大政奉還と坂本龍馬の近江屋おうみや事件と同年なのも、ついさっき判明して……こりゃぁ、読書どころでは済まないわ……。『通信簿、万年国語2』 これがキャッチフレーズの僕だけれど、社会科だって負けず劣らずで、まさかの江戸の響きにグフっとなった。 こんなことを調べ始めたのは、相棒からの小包が切っ掛けで、開封の儀の場には、同僚ワーちゃんが同席していた。相棒からの頼まれ物があったからだ。初めて見る開封の儀では、クリスマスプレゼントを開く幼子のように、ワーちゃんの好奇心の目がギラギラしている。「うわぁ~、ちゃんと区分してる...
レビュー

こんなことある? 充電できなくて壊れたはずのKindleが、しれっと復活したのだが?

2021年に購入した、Kindle paperwhiteから充電を拒否られたのは、去年の今頃のことである。何度も何度も果てしなく。Kindleへの充電を試みても、一向に「Kindleを使用する前に充電してください」のメッセージが消えやしない。ネットで調べてみると、この症状は割とあるようで、なのに解決策は皆無であった……。 とはいえ、Kindleの仕組みは単純なはずである。つまり、電源回路の不具合が原因なのだろう。思いたくもないけれど……Kindle壊れた。そう判断するのが正解だけれど、新しいKindleを買うのも気が乗らない。安い買い物ではないからだ。数千円なら買うのだけれど……対応策があるに...
雑談

文章には、人となりが滲み出る。

外套がいとうとは、防寒防雨のため服上に着用する衣服のこと。 シャーロックホームズや怪盗ルパン。ハリーポッターが制服の上から、冬の野外で着こなす上着。それが、僕の持つイメージである。現代の言葉に言い換えればコートであるが、昔の僕はその意味すら知らずにいた……。 文章には、人となりが滲み出る。 ブログに寄せられるメールから、僕が得られるのは文字情報だけである。人気ブログでないのだから、恥ずかしながら、その数も希少である。若い人たちなら意気投合し、オフ会と称して実際に会うこともあるのだろう。そこで親睦を深めたり、ブログ仲間を増やしてみたり……。 けれど、僕のようなオールドタイプにとって〝会う〟という...
雑談

取りあえず、何かを書こう。

ブログに関して、今の僕はナマケモノだ。 のらりくらりと、ブラブラしている。 下書きだけは、富士山ほど書いているけど、読み返せば愚痴ばかり。何ひとつ、ネットに出せる代物じゃない。ブログつーのは、酔ったサラリーマンが愚痴を吐く居酒屋じゃねーんだよ。自虐ネタにして面白ければ出せるけど、そうじゃない文章なんて出しちゃダメ。公衆の面前で、笑えない愚痴など書いてはいけない。それこそ、友人が泣くだけじゃ(笑) とはいえだ……取りあえず、何かを書こう。 ブログの更新は、ご存じのとおり牛歩ぎゅうほだけれど、小説は至極真面目に書いていて、四月分のチェックも終わり、五月分の原稿は相棒と共有済で、すでに来月の準備は整...
畑の話

冬の雑草、ホトケノザ

畑に生えた雑草の種類で、土の状態が分かるらしい……。 畑を始めた2022年。畝以外の土は固く、雑草とは無縁の状態だった。当時は、コロナ禍であり、三密が叫ばれていた。まぁ、普通に人とも会えず、外出することも少ない。軽い運動を兼ねて、せっせと畑の土質改良に取りかかる。 世界中で暗雲が立ち込めた時期である。下手をすれば、食料危機の恐れもある。多少なりとも、備えあれば憂いなし。それに加えて、ブログを毎日更新していたのだから、記事に華でも添えましょう。そんなぶらり散歩気分で畑を始めると、大喜びしたのが友人だった。後で知った話だけれど、友人の畑の腕前はプロ級だった。嫌でも会話が盛り上がる。 何もかも、神の...
畑の話

春じゃがいも(ダンシャク)の植え付け 2025

2025年2月25日(火) 春じゃがいもの植え付けを実施した。じゃがいもの品種はダンシャクである。当初の予定では、月曜日のショート・ショートのシナリオに合わせるつもりだった。 けれど、雪は降るわ、寒いわ、冷えるわで、無理して風邪でもひいたら本末転倒なのだから、植え付け作業は大事を取って見送った。ミッションの実行を一日ずらすと、晴天のぽかぽか日和で、これはこれでよかったのかもしれない(笑) 種芋の芽出しは完了している。調子がよければ、二週間もすれば地上に新葉を出すことだろう。小説のように、畑に幼女は現れなかったけれど、これはこれで楽しめた。玉ねぎを収穫した後で、じゃがいもを食べられることだろう。...
ショート・ショート

春じゃが植えよう

友人が、この世を去って二度目の冬。 今朝は、この冬一番の冷え込みだった。裏を返せば、これから暖かくなるだろう───だから、春じゃがを植えようじゃないか。すでに畝の土はできている。あとは種芋を植えるだけ。 種芋を手に持って、畑にしゃがんで作業を始める。じゃがいもの品種は、キタアカリ。やっぱ寒いな、息が白い。畝にスコップを突き立てると、何かの気配を感じた……幼女が僕の隣で座っている。おかっぱ頭が、ちょこん……って、感じだ。背格好なら五歳くらいか? 見たことないけど、近所の子だろうか? いずれにしても、これはよろしくない状態だ。今のご時世、何を言われるやら分からない。この場を切り抜ける手立てはあるか...
畑の話

大根の収穫(2025)

僕の周りの人たちの話では、この冬は、野菜の成長が悪いのだとか……。僕もそれを、自分の畑で感じていたけど、その原因が分からない。幾らこの冬が寒くても、そこまで寒いか? と訊かれたら、そうでもなくて、定期的に雨も降った。野菜がうまく育たない。その原因は謎である。 とはいえ、植えた大根を放ってもおけず、今日、めでたく収穫した。小ぶりな二、三本を、こっそり残して。もちろん、それは自分用だ。大根だって、スーパーで買えば高い。てか、どうしたよ? 野菜の高騰。おでんさえもが、高級食に思えてきた(汗) 以前にも書いたけれど、ふたつの畝で大根の種をまいた。まずは、嫌な予感がした畝から。 年末に、大根をお試しで抜...
雑談

不幸の手紙

インターネットのなかった時代、僕らの通信手段は電話と手紙であった。隅っこに謎の相合傘がちょこっと書かれた、駅の伝言板も含まれる。今回は手紙の話だ。忌まわしき不幸の手紙。その内容は、ネット時代のチェーンメールのようなものだが、詐欺メールのように一定数は真に受ける。それは、今と比べものにならないくらい、膨大な数になるだろう。不幸の手紙が全国で飛び交うとすれば、ゆうびん屋さんはウハウハだ(笑) これは、日本全国に口裂け女の噂が広まった八十年代の話である。同時期に、不幸の手紙がインフルエンザのように流行した。少し年上の先輩の頃は、幸福の手紙であったそうだ。───不幸の手紙が来た! 噂話が現実味を帯びた...
雑談

遠い昔のホームページ

大変ご無沙汰しております。雉虎です。 執筆中の、のんちゃんのブログ王第三部。何度も変えた題名を決定して、一万文字ほどの原稿を、めでたく相棒にメールしました。毎度ではありますが、新しい世界の書き出しが難産で、ようやっと勢いに乗れそうです。小説は冒頭の枕詞まくらが一番難しい(汗) ブログ王の続きの話なので、そのまま書けると思っていました。けれど、現実は甘くもなくて、主人公が変われば見える世界も変わります。なので、新たな主人公を憑依させるのに、ずいぶんと難航してしまいました。僕は頭で小説が書けなくて、一足飛びで中学生に戻るのも難しい(汗) 並行して、相棒からの本を読み進めてゆくと、文豪たちの文体に、...
小説の話

二月は読書月間(2025)

今日サヨを書き終えたので、次の執筆に入る前に、取りあえず充電します。新作は、まだ一行も書いていません(汗) プロットも、イメージも。頭の中にあるのだけれど、頭の中がスカスカで、何かを見れば思考がブレて、何かを読んでも思考がブレる。それは、当初からの課題でもありました。ブレないためには、それなりの知識というものが必要なのでしょう。 例えるのならトラックの荷台。荷物が整然とキッチリと収まっていれば、どこまで走っても荷崩れしません。ですが、隙間があればそうはいかない。僕の頭の中はそんな感じで、まだまだ外部からの影響を受けやすい。言い換えれば、伸びしろたっぷり雉虎きじとらさん。だから、本を読もうと思い...
小説始めました

今日もサヨリは元気です(笑)”036 あとがき”

今日もサヨリは元気です(笑)を読んでいただき、ありがとうございました。掲載の道中でいただいた、数々の温かいお言葉にも支えられて、ようやく完結することができました。読者の皆さまには、感謝の言葉しかありません。心よりお礼申し上げます。 2024年10月8日22時34分。現実の世界のサヨリは、虹の橋を渡りました。未だに実感が湧かないもので、歩きながら、読書しながら、小説なんぞを書きながら。ふとした瞬間。いるはずもない、サヨリの存在を感じることがあります。「サヨリちゃん? あっ、そっか……」ほんと、不思議な気分です。 先日も、スーパーのレジかごが重くて重くて、米を買った覚えもないのに。かごの中を覗いて...
小説始めました

今日もサヨリは元気です(笑)”035 エンドロール”

この家で暮らし始めてから、数日が経ちました。雨のコンビニで、ボクを助けてくれた男の人は、いつもニコニコしています。そして「お父ちゃんだぞぉ〜」と言って、ボクに高い高いをしてくれます。だからボクは、この人をお父ちゃんと呼んでいます。 高い高いをしてもらうと、上からとか、下からとか、斜めからだとか……ボクから見えるお父ちゃんの顔が、色んな角度から見えて楽しいです。 ボクを高い高いするお父ちゃんは、ボクの顔を下から見上げて微笑むと、次はボクのお腹をジッと見て「ヨシ、健康!」と言って喜びます。その後で、ボクの鼻に自分の鼻をくっつけて笑うのです。 でも、不思議です。ずっと前から、ボクはここにいたような気...
小説始めました

今日もサヨリは元気です(笑)”034 再会”

034 再会―――空耳じゃない! 愛しい声が聞こえる向こうで、痩せた猫がうずくまっている。額にくっきりMの文字。サヨリと同じキジトラだ。近づくと、猫は俺を見上げて「ア、アっ」 と、鳴いた―――刹那に二十年前の記憶が蘇る。サヨリだ! 俺は、いても立ってもいられない。「抱っこ、しような」 俺が猫を抱き上げると、猫は俺の首の後ろに逃げ込んだ。俺の頬をペタペタ叩く、長い尻尾のその先が、カギのように曲がっている。何もかもが……サヨリだった。「天国で、着替えるのを忘れたかい? お前らしいな……サヨリさん」「ア、アっ」 その鳴き声が、俺には「ただいま」に聞こえた。猫の温もりと、毛触りと、小さな鼓動が首に伝わ...
小説始めました

今日もサヨリは元気です(笑)”033 転生”

033 転生 生まれてすぐ、ボクは捨てられました。どうやって生きてこれたのかも分かりません。本能のままに仲間を真似て、虫や魚や草を食べました。人間には近づきません。沢山の不幸を見てきたからです。幸せになった仲間もいたけれど、その数は少なくて、やっぱり人間は信用できません。人間は悪魔と同じで、いつも笑顔でやってきます。 夜になると、ボクはお月さまを眺めて過ごします。そうしていると、懐かしい気持ちになるからです。ボクは同じ夢をよく見ます。お月さまへ向かって羽ばたく白い鳥の夢です。そして、ボクは思うのです。───ボクには、なすべきことがあるような……。 ボクが生まれてから二度目の夏。ボクの前にふわふ...
小説始めました

今日もサヨリは元気です(笑)”032 産神チフユ”

032 産神チフユ 人間が忌み嫌う死神は、どうして千の春と書いて〝チハル〟と呼ばれているのか? 魂を現世へ誘う産神は、どうして千の冬と書いて〝チフユ〟と呼ばれているのか? 死と生とを鑑みれば、逆だと感じる名前です。けれども、現世の外側に身を置けば、自ずと答えは見えてきます。 その証拠に、人も動物も天国を希望します。天国とは苦しみなき世界です。食欲、性欲、物欲、感楽欲、承認欲……苦しみとは、これらの欲が生み出す負の幻想にすぎません。心の中に欲がなければ、どこで暮らしても幸せです。つまり天国とは、すべての欲望から解き放たれた世界なのです。 トビちゃんと、ここで暮らしていたかった……でもボクは欲を選...