───同級生、どうして僕を閉じ込めた?。
開き書けたチャクラの向こう。ようやく僕は解放された。それは、お手伝い作業中にボケ老人が起こした悲劇であった。否、喜劇というべきか・・・。
悪意が無いだけにタチが悪い。
───事件は2時間前から始まっていた。
知人の仕事のお手伝い。やり方も熟知している。だからワンオペでも構わない。そんな誰にでも出来る簡単なお仕事、平和な半日、トイレへ向かうまでは。
「今日、お客さん来るから後は任せる」
その言葉を残して社長は工場を後にした。職場を抜けるのは互いの自由。今日に限ってという話でも無い。
───お昼間まで頑張ろう。
僕のパフォーマンスは無音状態で真価を発揮する。二人の時は絶対に消さないDR・コトーのテレビを消して、集中力を2時間高める。本日も安全にの気持ちを添えて。
───静かな工場、心地よきかな。
作業も順調そのもの。集中力がものを言う出来高作業の世界では、ゾーンに入ると時間の感覚すらも消えて無くなる。あっという間の2時間に、僕のチャクラが臨界点を越え始めた。
───お昼の前に、まずトイレ。
トイレがあるのは工場の外である。つまり工場を出ないとトイレに行けない。巨大な引き戸の取っ手を握り、腰を据えて一気に引き抜く。
───動かない。
引いても、引いても動かない。想定外の出来事が起こると人間はフリーズを起こす。一種の思考停止状態。なぜ開かない、どうして開かない。頭を使え、それがたとえボケていても。
───急がずに、でも、休まずに。
ゆっくり引いても、グイッと引いても開かずの扉。想定される可能性はある。ドアの鍵だ。鍵は外から南京錠で施錠するシステム。そして錠は工場内で保管が鉄則。なのにそれがない。
───なんでなん?。
お互いボケた爺だけれど、ジグソウまではしないだろう。とりあえず南京錠を探す───鍵が無い。心温まる絶望的ドラマの幕開けで、今日もサヨリは元気です。
───裏のドアを開いてみるか。
出入り口は裏側にもある。鍵は内側だから問題ない。普段使わない開かずの扉。それはさしずめゾンビ映画さながらの光景であった。ゾンビの侵入を防ぐ為、生存者が力を合わせて机やロッカーで補強するアレ。
───工場・オブ・ザ・デットやん。
ドアの前の荷物をどけて、本丸を開くけど開かねぇ。長年使わなかったせいなのだろう。少し開いた状態で、そのままドアは沈黙を通す。ようやくそこで詰め込まれた現実を自覚した。
───NASAへ通信!、トラブル発生だ!。
「お前、工場の鍵、掛けたやろ?www、ボケてんの?、バカなの?、心の鍵と工場の鍵は開けとけよwww」
「えっ、俺がそれやったんか?www。本当に掛かってる?、心の鍵は開いていますwww」
「鍵掛けてっから、電話掛けてんじゃんwww」
「すぐ来いと?www」
「早く来ないと驚門開くぜwww」
───病院、市役所、そしてデート。
待つ時間とは長く感じるものである。心と股間を落ち着かせ、作業を再会しながら開門の時を待つ。
───「レスキュウ!wwwww」
その高らかな声に、僕とチャクラが解放された。それは連絡から五分後の事である。
───お前、反省しないワタリかよ?。
それは日常に潜むお茶目な小悪魔。50を越えれば尚更である。いざと言う時のために、トイレだけは頻繁に行っておこう。そう僕は心に深く刻み込んだ。
───今度は誰の番だろうwww。
楽しみである。
コメント
ご無事で、なによりです(笑)。それにしても、電話を持ち歩く事が、当たり前の時代で良かったですね。これが、昭和の時代だったら‥。あ~、考えちゃダメだ!。想像しちゃダメだ!。本当に、ご無事でなによりでした(笑)。
ほんと、ほんと。ケータイ無かったら翌朝発見の案件ですよ(笑)。冷蔵庫も水道もあるので、入れるのには不自由無いですけれど、出す為の設備が無いのでと想像するだけでも笑ってしまいます。付き合いが長いからの笑い話で、そうでなければ一悶着あったでしょうね。「鍵かけるなよ」が今は合言葉になっています。
最後の広告が好きすぎますw
こんにちは〜。
お久しぶりです(笑)。
広告もウケ狙いで選んでいます。売れることは無いですけれど、パッと花が咲きますよねwww