2024-07-03

水曜日(猫の話)

飼い猫信長と野良猫家康(浮気発覚)

降り続く雨の中、茶色い猫は屋根に通った。友達と会うために。しかし、家康が姿を見せることはなかった。雨雲を眺めて信長は思う。きっと晴れたら、家康も姿を現すだろうと。  翌朝。信長が窓の外を見ると、空いっぱいの青天だった。よし、晴れた。今日は家康に会えるだろう。信長は、ご主人様が準備してくれたカリカリを少しだけ残し、猫砂の上に用を足し、外の世界へ飛び出した。いわゆるこれが脱走である。 ───いた! 家康だ。  信長は、家康めがけて一目散に駆け寄った。 「家康ぅ! 家康、家康ぅ!」 「久しぶり。秀吉」  いつもどおりの〝秀吉〟に、信長は少しうれしくなった。それでこそ、家康だ。 「信長じゃ!」  信長...