猫は歳を取ると動かなくなる。
ご飯を食べて、水を飲んで、トイレが済んだらずっと寝ている。うちのサヨリの行動パターンも同じで、飯食って、ミルク飲んで、💩したら寝るだけ。もうね、置物。ほとんど動かない置物みたいになっている。気づいたら「あら、いたの?」そんな感じ。
これでも昔はブイブイ猫で、外へ出たら何処かしら怪我して帰っいた子。怪我をするのは決まって顔。でも、顔の傷は闘争本能の現れで、敵に背を向けない漢の証。サヨリさんは、こう見えても武闘派なのです。そんなサヨリさん。ちょっとした隙に事務局からの脱走に成功。久々に出た外の世界で彼が見たものは‼️
次回キジとら『フリーダム』
この続きは、フリック、フリックぅ!
脱走と自由、そして、捕獲
ボク名はサヨリ。
この家に来て、しばらくしてからそう呼ばれるようになった。ボクがこの家に潜り込んだ理由は、雨風を凌げる屋根と、腹を満たす食料が欲しかったから。それ以上でもそれ以下でも無い。猫が家に入り込む目的なんてそんなものさ。犬と一緒にされては困るニャ。
最初は若い男の子の猫として暮していたのだけれど、何年かしてからは、男の子のお父さんと一緒にいる時間が長くなった。このオヤジ、毎日、飯と水を献上してくれるだけに、捨てるには惜しい存在。
もう少し、一緒にいてやっても良いだろう。
そうこうしている間に、どれだけの夜を超えたのだろう。夜な夜なオヤジと一緒に眺めたたネオンライト。かれこれ二ヶ月ほど観ていない気がする。それどころか、このオヤジと一緒に過ごす時間がやたらと長い。プライベートもクソもあったもんじゃ無い。
何があった、人間界。
大ごとか?ハルマゲドンでもあったのか?。
いつもは少しだけ開いているドア。今日は少し違って見える。ドアの向こうから差し込む光がいつもと違う、大きい。ボクはその異変を見逃さなかった。アレ?、行けるんじゃね?身体が通るんじゃね?。通ちゃうよ、お父ちゃん。オヤジはけたたましい勢いで、何かをパソコンに向かって打ち込んでいた。絶好のチャンス到来。
行ける…今なら…シャバの空気に触れられる。
この前足を、肉球を、ボクの魂を一歩だけ進めれば、きっとそこはフリーダム。自由の世界が待っている。ごめんね、父ちゃん。やっぱりボクは、男の子何だなぁ〜🐈💭💭💭💩
きっとそんな感じで出て行ったのだろうなぁ〜、サヨリさん。
ノートパソコンに向かって軽く集中モードに入ってふと気づく。さっき、トイレに行ったサヨリさん。帰って来てないな、と。トイレにては長するだろ、10分くらいしてはいないかい?。💩か?ゲリピーしてるのか?。
換気の為に少しだけ開けておいた鋼鉄製のドア。いつもよりも開いて見えた。これって、サヨちゃん通れないか!。否!普通に通れるぞ。慌てて狭い事務局の中を探し回るが愛猫サヨリの姿はどこにも見えない。影も形も見当たらない。サヨリ専用冷房ボックスの中にも入っていない。
部屋の中からサヨリの姿がだけが忽然と消えた。
外に出ると数メートル先は国道で、この時間はまだまだ車の通りも多い。ヤバイ、ヤバイ、ヤバイって。とっさに事務局から飛び出すと、サヨリの後ろ姿が目に飛び込んで来た。車を見ながらちょこんと座る後ろ姿に安堵した。サヨリの背中に「車が見えるね」と声を掛けると、
「ウニャウニャ〜#;¥「#(/#:##):¥7**229@9:#」
ちょっと何言ってのか分かんない。
本人は僕に向かって何かを訴え掛けているのだけれど、脱走の弁解しているようにしか思えなかった。何かを訴え続けるサヨリの体を抱っこして、しばし外の景色を見せてから事務局に戻る。その間も、サヨリは僕にウニャウニャと何かを訴え掛けていた…。
もうね、
「お互いにこの歳なのだから、お説教もしないのだけれど、割と肝を冷やしたぞ」
とか言いながら、冷蔵庫の中のミルクをサヨリのお皿に注ぎ分ける。サヨリは何事も無かったかのように、少しだけ僕の顔を見てからペロペロとミルクを舐めはじめた…。軽くムカついているのだけれど、今夜はマグロのお刺身を狙ってみよう。半額のマグロがあったら買って帰るよ。
半額のがあったらね。
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