マロカン(弐)
「お父ちゃん。小五郎ちゃん……今日、お店に来なかったね……」 恵子は店の暖簾を片づけながらため息をつく。「どうしたんだろうねぇ、小五郎さん。昨日は今日も来るって言って帰ったのに……」 食器を片づける洋平も心配げだ。「昨日、恵子があんなことを言ったからかな?」 恵子は昨夜の態度に後悔を感じていた。恵子は思う。もっと優しくすればよかったのにと。「そんなことはないだろう……小五郎さんにだって、小五郎さんの都合があるだろうし……もしかしたら、昨日の約束だって、忘れちゃったのかもしれないよ。ああ見えても小五郎さん、今年で百歳だからね」 厨房で食器を洗う洋平は、優しい声で恵子をなだめた。「それもそうね」 ...