2024-06-01

ショート・ショート

透明人間と呼ばれた男

目立たたない人がいる───あれ、いたの? な体質の人。オレもそんな人間だ。ただ違うのは、オレの存在が極端に認識されないことである。透明と言えば聞こえもよいけど、無味無臭な透明人間となれば話は変わる。 いつもそう、いつだってそう。オレの名が認識されても、そこにオレがいると認識されない。厄介なことに、その理由がオレにも分からない。気配を消しているワケじゃない。むしろ……その逆。だから話をややこしくさせてしまうのだ。仲間との会話に混ざって発言だって抜かりないのに、後になって「あれ、いたの?」とは些か悲しい思春期だった。 目立たないオレにだって友だちはいる。オレのクラス全員だと言っても過言じゃない。声...