――やっぱそうなる……。
野菜を作り始めた途端、なんだかんだと問題が発生する。僕が最初に直面したのはきゅうりの病気であった。うどんこ病に強いと明記されたきゅうり。その苗が真っ先にうどんこ病に犯された――なんでなん?。僕が愚痴ると菜園仲間が腹を抱えて爆笑した。失礼にも程があって、今日もサヨリは元気です。
「うどんこ病に強いって書いてあったのに!、なんだよ、なんだよ、このざまは?。三本別の種類のきゅうり買ったのによ、うどんこ病に強いこいつが真っ先にうどんこ病てどういう事さね?」
「そんなきゅうりがあるものかwww」
「だって、だって、だってだよ。だったら誇大広告やん?」
「色々と試してみれば?。ぜんぶ嘘だって分かるから。そうそう、最初はみんなそう思う。まぁ、がんばれwww」
青々としたきゅうりの葉。それが見る見る白くなる。その先にあったのがウリハムシとテントウムシダマシの襲来。去年は笑って書いていたけど、現場はさながら戦場であった。
――めっちゃ喰いよる。
幸いにも虫の浸食よりも野菜の成長の方が早く、最悪の状況を免れはしたものの、たぶんそう、きっとそう、今年も同じ試練が訪れるのであろう。そんな未来しか僕には見えない。でも大丈夫。今年の僕には必殺武器があるのだから。
――野菜作りはスーパーロボット大戦と似ている。
スーパーロボット大戦とは、まだ僕の目が元気はつらつだった二十年以上も昔、ガッツリとハマったテレビゲームの名前である。ゲーム機はセガ・サターン。これがもうね、面白すぎて三度もプレイして同じクリア画面を見た。三回目のエンディングを見ながら我思う。「これは人をダメにするやつ」そう確信し、それ以来ゲームの一切を放棄した記念すべきゲームでもあった。
このゲームの醍醐味は、必殺武器を手に入れた直後の戦闘にある。ジェットスクランダーを手に入れたマジンガーにどんな性能があるのか?、どれだけ威力が向上するのか?。この想いは全てのゲームに通ずるのだろうけれど、幼少期にリアルタイムで、再放送で、再々放送で……。これを逃せば、もう、一生見られないかも知れない……そんな思いで、テレビに齧り付いて見ていたスーパーロボット達である。だから思いの入れ込み方が異次元なのだ。コレが分かるアナタ、そりゃもうお友達です(笑)。
――ス・ト・チュウ?。
その僕が野菜畑という戦場で、新たに手に入れようとしてる武器がストチュウであった。その名前は風の噂で耳にしていた。どこの誰だが知らないけれど、誰もがみんな知っているみたいな存在であった。害虫駆除では無く害虫予防に使えるらしい。だから、自分で我流で作ってもみた。でも、何かが違う……。
――去年の夏の話である。
ストチュウの作り方も人それぞれ。基本ベースは「酢」+「とうがらし」+「焼酎」である。それにシェフの気まぐれサラダの如く、身勝手の極意でアレンジを加えている感じであった。つまり、どれを作って良いのか分からない。何が正解なのかも分からない。
――そこで野菜の教科書の出番である。
友人から受け継いだ、八つの秘伝書の一冊「家庭菜園の新病害虫対策(野菜だより特別編集)」そのP36には「ストチュウ水の作り方と効果」が記載されている。教科書では、とうがらしは木酢液になっていた。
「やってやる、やってやるぞぉ~」
気合いを入れて焼酎を買いに出かけた。なんだよ、これは?。思いの外、高額であった。友人らは、こんなのを毎晩浴びているのか……金持ちだな、ガッカリだ。
よくよく考えてみれば、ストチュウ水は希釈して使うものである。水七リットルに対し、ストチュウ水の必要容量はペットボトルキャップ三杯分。そんなに要らない。酒の陳列棚を見渡すと、ワンカップ大関サイズの焼酎があった。価格は百八十円足らずであった。味なんて知るもんか。アルコール度数だけがあれば良い。これに決めた。お酢は百均で買ったのがある。木酢液も友人から授けられた。
――材料の全てが出揃った。
後は材料を教科書どおりに混ぜ合わせるのみである。だがしかし、話はそこで終わらない。終わったように見せかけて、さらば宇宙戦艦ヤマトのガトランティスが如く、教科書を一枚捲るとカカロット。スーパーストチュウ水のつくり方が顔を出す。そのバリエーションは全四種類。さしずめ、ストチュウ水のデパートだった。
①カル酢入りストチュウ水
②マグ酢入りストチュウ水
③マイエンザ入りストチュウ水
④貝化石入りストチュウ水
ストチュウ水のフォームチェンジに平成ライダーも真っ青である。賢く、真面目で、研究家の友である。きっと、僕の行動パターンさえも読み切って、この本を僕に託したのだろう。その気持ち、しっかりとこの胸に届いています。
「出来たらこれもやってみてね(笑)」
そんな声が聞こえた気がした。
つまり、全く酒が足りてない(汗)。
コメント
ウチの近所のホームセンターの酒類コーナー。味は二の次みたいな安い焼酎がずらっと並んでいるんです。そんなに売れるの?って不思議だったけど、焼酎は飲む為だけでは無いんですね。なるほど!でした(笑)
あー、そう言うお酒もあるんですね。
ホームセンターにお酒のイメージが全くありませんでした。行きつけのホムセンでは見た事が無いので、大きなホムセンに行ったら探してみようと思います。良き情報ありがとうございました(笑)。