――2023年4月19日16時30分。
高松市に豪雨予報が発令される。猛烈な雨(80mm/h以上)だったと後で知った。それと同じ頃、僕は畑に建てた簡易テントの下で雷を見上げていた。言い換えれば遭難であった。
豪雨が始まる30分前。昨夜の雨が気になり、僕は畑に足を運んだ。だってそうでしょう?、前回の玉ねぎを干していた屋根は無残にも大破していた。南側の支柱が折れてしまったからだ。幸いにも玉ねぎはブルーシートに守られて無事であった。けれど、折れる場所が違えば、玉ねぎは雨ざらしになっていただろう。急遽、持っている支柱を全て使い、屋根を復旧させたのは一昨日の事であった。
そして今朝の大雨である。気にならない方がどうかしている。頑丈に作ったつもりでも自然が相手なのだから油断は禁物。早上がりをして確認に向かう。その道中でマリーゴールドを5苗買った。スーパーマルナカの特売で安かったのだ。マリーゴールドはコンパニオンプランツで、根こぶセンチュウ対策と害虫対策の役目を果たす。無論、種をまいて育成中ではあるのだけれど、価格の安さについ手が出てしまった。玉ねぎの屋根が無事だったら、マリーゴールドを植えて帰ろう。
そんなぶらり散歩気分で畑に着くと玉ねぎの屋根は無事であった。とても良い子で雨を凌いだ。僕は急いでナスと、キュウリと、ズッキーニの近くにマリーゴールドの苗を植えた。次は、まさこ(玉ねぎ)の確認である。日に日にまさこは大きく育つ。まさこの葉っぱをよく見ると花の芽が出かかっていた。このパターンは問答無用で収穫である。20個ほど収穫し、大雨を凌いだ屋根の下に吊していると、ゴロゴロと雷が鳴り始めた。とっとと吊してさっさと帰えって、今日もサヨリは元気です。
――間に合わなかった……。
空は一気に暗くなり、滝のような雨である。激しい雨に、さっきまで煩かった選挙カーの声も消えた。ブルーシートの下で雨宿り。この屋根の実力とやらを見てやろう。そんな気分で外を眺めた。あちこちで空が光り、その数秒後に轟音が鳴る。こりゃ、雷のデパートだな。限界を越えた排水路から雨が噴き出し始め、ただの夕立だと舐めていた自分が、実は遭難しているのだと悟り始める。天井を強化した屋根はびくともしなかった事が不幸中の幸いであった。
――30分くらいで雨も上がるだろうて。
そんなアテも外れてしまう。屋根のお陰で雨に当たる事は無いのだけれど、天井からぶら下がっている玉ねぎが邪魔である。コツコツと吊るしたまさこが頭に当たるのだ。だからといって、いつまでも小さくなってもいられない。なのに雷と雨脚が止まらない。つまり、スクーターのメットインに入ってるカッパを取りにいけない。時刻は17時をまわった。雨は良い、問題は日没である。ここでの日没は恐怖でしか無い。外柵は開けっぱなし。猪が侵入すれば万事休す。さて、どうしたものか……。
雨が和らいだ隙を狙ってバイクにカッパを取りに走った。カッパを取って屋根で装着。これで無敵だ!。アイアンマンスーツを着たような気分である。僕ら世代なら宇宙刑事のコンバットスーツの方が理解しやすいかも知れない。相変わらず雷はオーケストラのような賑わいを見せた。以前の僕なら雷が止むまで絶対に待つ場面である。けれど、僕は大丈夫なような自信があった。最近、見えない何かに守られてるような気がしてならないのだ。だからそのまま帰ら……なかった。
4本だけトウモロコシの苗を植える為である。明日と明後日、僕は畑に来られない。それは100%決まっている。下手をすれば明明後日も無理かも知れない。だからセルトレイの4本だけは植えつけなければならなかったのだ。育ち過ぎたらアウトなのだから。慌てて転んだら何にもならない。ビカビカと雷光たなびく中でトウモロコシのセットを完了させた。カッパスーツで身を守り、滝のような雨に打たれながら我思う。
――場合によっては、畑でも遭難はあるのだと。
現場からは以上です(笑)。
コメント
どうやって帰ったのか
非常に気になる️☔️
カッパを装着して無敵になって、雷鳴たなびくゲリラ豪雨の中をバイクで帰りました。怖いというより雨粒が痛かった