昼食に取ったお芋さんのカロリー切れた。
───腹が減って床が歪む…グニャグニャだ。
これから夜の部、今の状況は極めて不味い。何かを食べなければ最後まで胃袋が持たない。胃の奥底からグーグーと法螺貝が鳴り始める。この危機的状況に僕はマールに飛び込んだ。台風襲来二日前、9月17日の出来事。マールとは毎度お馴染みマルナカの事である。牟礼のマルナカはどういう訳かマールなのだ。つまり、惣菜弁当もマルナカやパワーシティとかと同じ筈である。
けれども、この弁当は初めましてな気がする。
だってそうでしょう?、巨人、大鵬、卵焼き。幼稚園の頃、玉子2個のおつかいで、1個落として地獄見た。帰りたくても帰れやしない、怒られるのに決まってる、天を仰げば一番星なんて見た事ある?。昭和のオヤジにとって玉子とは特別な存在だったのだ。そんな黄色い天使が記憶に残らぬワケが無い。こんなの普通、運動会とか遠足とか病気にならなきゃ見られない。この気持ちが分かるアナタ、そりゃもう、魂の同士です。
───そのデカさ、業務用か?。
玉子焼きの存在感に心が揺れる。ガストのはみ出るステーキ感半端ない。しかも3割引って、これはもう、神の教示しか感じられない。緊急購入で即買いである。皆さんのご想像どおり、食べてしまえば夢から覚めて、サヨリは今日も元気です。
───早く帰らないかなぁ。
てか、早く帰れよ。何故ですか?、今日に限ってまだ帰らないのですか?。グジャグジャ話し始めて帰らない上司に僕の胃袋が問いかける。これってなにハラ?、こっちの腹が持たないのだけれど。腸から巻き起こる小声の帰れコールが届かない。それでも彼は帰らない。時計は時を知らせてくれるが、あなたは時を遅らせてくれる。話が…長い!。
───10分あるよ、何とかなるよ。
上司帰宅、来客時刻10分前、たかが弁当、5分もあれば十分だ。そもそも、このお客様が定時に来たのを見たこと無い。その安定感たるやラーメンズのコント、いわゆる遅刻魔、だからイケる。
サッと開いてガツガツ食べる。うどんは飲み物だけれど急いで掻き込む弁当はシェイクだった。大きな玉子焼きのペース配分にも抜かりない。寿司と同じで弁当の〆も玉子焼きである。だから最後の一口の為のストーリーを組み立てる。玉子焼きから始まり玉子焼きで終わる秋物語。全てはこの一口への伏線に過ぎない。他のおかずはモブなのだ。
───さぁ、ショータイムだ。
黄色い天使を頬張るだけで薄ら見える桃源郷。次はライスでリフレッシュ。なんだ、なんだ、から揚げあるじゃん。血糖値が爆上がりしそうな油が染みる。チクワに至ってはガソリンタンク。赤ウィンナーが懐かし味を加える。その全てが特別では無いけれど、空腹は最高のエッセンス。今日限定で至高にして最高の時を過ごせる筈だった、アナタのお顔を見るまでは。
第四コーナーを周り切り最終直線に差し掛かる。残しておいた玉子焼きは軽く大きめ。そこに箸を伸ばすと慢心の笑顔のお客様、何でなん?。咄嗟に時計の針を睨むと今日に限ってフライングである。
───でも何で?。
ディアトロフ峠事件の真相くらいの謎であった。
コメント
過去記事の、おくどさんの玉子焼きも美味しそうだったけれど、こちらも美味しそう(笑)。たかが玉子焼き、されど玉子焼き。お店が違えば、やはり味とか、何か違うのかなぁ?あ、でも今回、残念ながら落ち着いて味わえなかったですものねぇ。食事は、落ち着いてゆっくり食べたいですよね。体のためにも、食レポのためにも。
へへへへ…おくどさんと比べられたら、目の前で焼き上げるおくどさんの玉子焼きが上です。弁当の方の玉子焼きはコンビニやスーパーについてくるきめの細かな小さな玉子焼きを大きくしたスイーツっぽい感じです。どういうわけか急激な空腹で職場に弁当を持ち込みました。ゆっくりと味わいたかったです(汗)。