テーブルマークの牛すきまん

───国内で採水した天然水だけじゃ物足らぬ。

秋と言えば、読書の秋、芸術の秋、運動の秋が定番である。けれど、収穫の秋から始まる食欲の秋に勝る秋など僕は知らない。水だけ買って帰るのも、秋の夜長に失礼な気がしてならない。

お買いものは今日もいつもの鶏のササミが本丸である。これだけ買えば他は要らないつもりだった。ふと、水を切らしていたのを思い出し、税込５１円の天然水（500ml）も一緒にレジカゴへ。でも何か物足りない、僕の胃袋の中の食欲の秋が黙っちゃいない。咄嗟に店内全域にアンテナを張り巡らせる。

───肉まん、みーつけた。

肉まん、あんまん、カレーまん、ピザまん…へ？、去年もこんな子いましたっけ？、もしかして新人さん？。牛すきまんが目新しい。ものは試しで買っとくか。トッポは最後までチョコたっぷりだけれど、牛すきまんはどうだろう？。いつものスーパー、肉まんの前での出来事である。

───にゃんやコレ？。

お目当てじゃない肉まんを睨みつけ、サヨリはヒロシみたいな顔で見下ろす。だってこれササミと違う。ビッグバンとオードリーヘップバーンくらい違うと思う。興味ないから知らんけどにゃ───肉まんにサヨリは全く興味を持たなかった。それはそれでありがたい。

───ごはん、ごはん。

先ずは、この子から落ち着かせよう。サヨリは賢い。「ごはん」と言えば、ごはんと認識するようだ。肉まんなんかそっちのけでササミに火が通るのをお行儀よく待っている。ときたま「ゴワァーン！」と鳴きながら。

───賢い猫だ、飼い主の顔が見たいわ。

ササミをレンジで１分回し、冷ませる間にスチーマーをセッティング。肉まん１０分、お芋４０分というところ。お芋も肉まんも蒸さないと本来のパフォーマンスを発揮できない。よし、イケる。サヨリの晩ご飯の間に肉まんと牛すきまんを蒸し上げる。先ずはいつもの肉まんである。

───肉まんはいつもどおりの味であった。

肉まんとは、僕にとって冬の風物詩のひとつである。小６の冬に目覚めた、熱々の肉まんとキンキンのコーラは幾つになっても最強コンビ。さて、牛すきまんは、このゴールデンコンビを越える事が出来るのか？。注目の牛すきまんのお試しである。もしかしたら、固定観念がひっくり返る…ミラクルは起こらなかった。

───甘いな、この子の相棒はお茶だったな。

牛すきは僕の舌には甘かった。牛すきの甘さとコーラの甘さが舌の上でシビルウォー。アイアンマンの理想とキャプテン・アメリカの信念が激突する口内で、どちらも主張を譲らない。美味しいよ、旨いけれど、組み合わせるならキャプテンじゃなくてハルクだよ。

だってそうでしょう？、この後に続くのが糖度１４紅あずま。甘いに甘いはかなり甘い。アコムの審査だってそこまでは甘くない。どれも単品なら嬉しいけれど、バディにコーラを選んだ途端に胸が焼けた。

───肉まんの季節はこれからが本番。

肉まんの具が牛系ならば、迷わずお茶を買おうと思う。僕の中で牛すきまんは、あんまんと同カテゴリに入れられた。そんな意味からもミルクとの相性は良さげに感じる。

───来月からはスチーマーが動きっぱなし。

来月はうちの畑で芋掘りである。猪さえ来なければサツマイモが沢山掘れる。つまり、毎日、芋を蒸す事になるのである。

けれど、芋ばかりじゃ飽きるだろう、だったら別の何かも蒸さないと。簡単である、芋のついでに蒸せば良いのだ。サンタクロースがつむじ風を追い越すまでに、肉、あん、カレー、ピザ、そして牛…。色んな「まん」シリーズを試してみたい気分になった。北海道には蟹が詰まった肉まんもあるのそうだ。何それステキな話じゃないか？。

───喰って良いのは太る覚悟のある奴だけだ！。

この秋は喰う！。