うちのニャンコを実況してみた

水曜日(猫の話)

 水曜日は猫の話

 今日は猫の話題を書く日だけれど、猫の研究者でもない僕である。つまり、書くのはサヨリだけ。そうなると、どうなるかって? 老猫は基本、寝て起きて、飯食ってウンコして寝るだけだ。まぁ、普通に書くことがなくなるのだ(汗) それでも元々猫ブログ。猫の話題は欠かせない。けれでもそれが、徐々に僕の首を絞める。つーことで、たぶんこのブログ初であろう〝実況形式〟で書いてみよう。ブログだって、小説だって、何事も練習ですよ(汗)

───五月の陽気に晴れ渡らない日本列島。こちら香川は雨であります。

 本日は5月1日。寒かったお正月。温かみを帯びた梅の花。それが、つい昨日のことのように思い出されるのは、私だけなのでしょうか? 冬を越え、春を抜け。初夏の風を感じ始めた今日この頃。そして、楽しい、楽しい、ゴールデンウィーク。そのひと時を、ご家族とお過ごしの方もいらっしゃることでしょう。

───おーっと、事務所に男が帰ってきた。

 遊んでください、楽しんでください。俺はブラック野郎だからと、男は厚い鉄扉の前で佇んでおります。その心中は如何に? そこに興味が湧くのも、私だけではないでしょう。おーっと、男が何かをつぶやいているぅ。何だ、何だ。お前は何をつぶやいているんだぁ?

「ごめん、ごめん……」

 これはどうしたことでしょう? 男が鉄扉に謝り始めたぁ~! 仕事で失敗をしたのでしょうか? それとも、見えない何かへ懺悔でもしているのでしょうか? 耳を澄ませばカントリーロード。扉の向こうからも何やら声がしております。

「ごぉぉぉぉぉぉぉわぁぁぁぁぁん!!!」

 これはもう、劇場版名探偵コナンの「らぁぁぁぁぁぁーーーーーん!」を彷彿させる声であります。扉の向こうは、業火の向日葵でございましょうか? 人とは思えぬ声であります。ドアの向こうに、獣か? 魔物か? 獣人でもいるのでしょうか? 慌てるようにドアノブの鍵を回す男。慌てていても、開かない。もはや、ゾンビ映画のワンシーン。いつもは秒で開けられるドアが、どうしても開かない! そんな焦りオーラを漂わす男───もしかしてこの男、扉の向こうにゾンビでも飼っているのか? だが、がんばれ! がんばってほしい! 天に伸ばした先にある元気玉。その悟空へ〝気〟を送るが如く、私は彼に声援をお送りたい。

───おっと、開錠が完了したもようです。

 でも、だが、しかし! ドアを少しだけ開いて、そっと男は中を覗いているぅぅぅ! そして、今日一番の笑顔を見せたぁぁぁぁぁ!!! もしかして、彼は変質者か何かなのでしょうか?

「ごめんねぇ~!」

 そう言いながら、男はゆっくりとドアを開いております。扉の向こうに広がる異世界空間……それは、何かの事務所のよう。男の視線の先にあるものは……おーっと、猫だぁぁぁ! 虎のような形相で、キジトラ猫が男に向かって叫んでおります。「ごわぁ~ん!」っと。それはまさしくご飯の要求! 魔法少女の使い魔とは真逆で、猫に言われるがままへつらっている。どうした男? この猫に前世で悪事でも働いたのか?

 連休なんてどこ吹く風で、肩に掛けた赤いリュック。きっと、今日も仕事帰りなのでありましょう───ゆっくりとリュックを下ろしてお疲れちゃん! おーっと、猫が男が下ろした腕に頬をすり寄せ始めたぁ~! 〝お前のものは俺のもの〟とでも言わんばかりの猫スリスリ。この猫の前世は、ジャイアンなのでありましょうか?

 とはいえ、嵐の前の静けさであります。もう片方の手のひらで、男は猫の頭を撫でております。それに猫もまんざらではなさそうだ。ほっこりしたのも束の間であります。ふたたび猫はご飯の要求をし始めたぁ~! 慌てて男はパウチの袋に手を伸ばす。もう待てにゃいと、猫の動きも激しさを増しているぅ。どうする男? この一手!

「半分ね」

 何ということでありましょう? パウチ袋の半分だけを、男はお皿に入れております。この令和の物価高。その荒波が男の財布を直撃したか? 猫が不満の塊です。大きな瞳があまりにも切なげであります。辛い、パウチ半分。猫にとって辛すぎる光景であります。彼に横線をもう一本書き足して、幸せという文字にしてやりたい。そう感じるのは私だけでしょうか?

 おーっと! 猫がパウチにかぶりついております。美味しいかぁ~? 否、美味しかろう! 食っていいのは、食わる覚悟のある奴だけだと、言わんばかりの食いっぷり。あっという間の完食であります。空になった皿に注ぎ込まれる白い液体。こ、こ、これはぁ! ミルクです。人間様の牛乳よりも、遥かに高級な猫専用ミルクが注ぎ込まれましたぁ~! よかったね、猫! そんな言葉が喉をつくぅ~。しかし、ミルクも少しだけ……いやはや残念。猫もがっかり。「猫のミルクは高級です。ですから、猫のミルクは高級なのです!」 この構文の使い手が、国会でいの一番に審議すべき案件でしょう。それほどに、猫のミルクの値段は高い。

 その間に、ささやかなミルクを飲み終え、男に安息の時が訪れ……なかった。まだまだ猫は「ごわぁ~ん」を繰り返しております。猫は可愛い。だが、しかし! そんな表情の男であります。おっと、意を決して男がパウチに手を伸ばすぅぅぅ~! 猫の叫びに男の漢気が発動されたのでしょうか? 犬であるならクルクル回るであろうこの場面。猫は喜びの舞を見せるのか……見せない。(だから、先に出せばいいのに……)そんな瞳で見つめております。この男、前世でどれだけの罪を犯したのか? それが心配でなりません。

 そうこう言っているうちに、猫はパウチを食べ終えました。そして、水を大量に飲み始めます。ミルクがねぇ~から水でも飲むか。無言の仕草の煽り運転。男の心中は如何ほどか?

 大騒ぎした食事も終わり、ようやく猫も一安心。このまま静かに時が……おーっと、このままでは終わらさない! 猫に異変が起こっています。これはまさしくあの合図。あぁ、神様ぁ……それだけは。テールランプの5回点滅。それは〝あ・い・し・て・る〟のサインであります。猫が胃袋を上下させる仕草はまさしく〝い・ま・か・ら・は・く・よ〟のサインに他なりません。猫には吐き戻しという習性があるのです。それを見越して半分のパウチだったのでしょう。でも、もう引き返せない。

 心を鬼にした半分こ。でも、今日は可愛そうだからひと袋。心の中で彼は叫んでいたことでしょう。食わせていいのは、吐かれる覚悟がある奴だけだと。床にまき散らかされた吐瀉物。男は手慣れたように拭いている。残った左の手の先で、猫の頭を撫でる男の姿は美しい。これぞ、飼い主の鑑。そう、私は称したい。

 頭を撫でられながら、猫が何かを言っております。お礼か? お礼の言葉をかけて……いない。

「ごわ~ん!」

 ハロウィンの深夜、忘年会の帰り道。街角で、一度吐いてから飲みなおす。これはまさしくヨッパと同じ。何事もなかったかのように、まだ飯など食ってないかのように。平然と猫はパウチを食べ始めております。〝吐き戻しは猫の嵯峨、それを守るが俺の嵯峨〟あるのかないのか知らないけれど、そんな名言が頭に浮かぶと、目頭が熱くなる私がいました。このひとりと一匹との関係は〝我も人なり彼は猫なり〟なのでありましょう。これから猫を飼おうと思う方々。猫は可愛い動物ですが、冗談抜きで猫は吐きます。それも視野に入れてから、猫をご家族へお迎えください。

 実況は私、山田太郎。今夜の提供は〝あなたのキジとら〟でお送りいたしました。では、また次回をお楽しみに(謎)

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