───桃畑のお昼どき。
うどん、弁当、それともパン?。久々におくどさん行ってみよ。おくどさんとは、一宮町、高松町、レインボー通り、宇多津町の計4ヶ所で営業中の海鮮セルフ食堂である。つまり、讃岐限定ご当地食堂。おくどさんでは迷いません。迷う必要すらありません。だってそうでしょう?、そんなのアジフライに決まってる。五十を越えてそうなった。
───アジフライの聖地に名乗りを上げた長崎県松浦市。
いつの日か、揚げたてのアジフライを聖地と呼ばれる土地で食してみたい。きっと、旨いに決まってる。今日はおくどさんでアジフライを食べるんだ!。唐揚げ、トンカツ、アウトオブ眼中。ルンルン気分で地獄に堕ちた。
───アジフライがねぇ!。
あるんだよ、たまにあるんだよ、おくどさんて所はね。「アジフライ作ってよ」って頼んでもダメなんだよ。一度チャレンジして粉砕された経験則から、僕は気持ちを切り替えた。子供じゃ無いんだから、我儘はもう言わない。
───プランB。
無いものは無い、あるもので決める。僕の後ろで並ぶお客はいなかった。からあげ、とんカツ、豚バラの生姜焼き…。別のおかずをゆっくりと吟味する。その猶予は十分にあった。
───嗚呼、スパゲッティー。
もうね、たまにこんなの食べたくなる。遠足の弁当で食べたお母さんの味。パスタじゃダメなんだよ、スパゲッティじゃ無いと。煮込みハンバーグに添えられたスパゲッティを僕の胃袋が指名した。
───口ではパスタと呼ぶけれどもだ、心の中ではスパゲッティ。
パスタの呼び名が一般化したのは、イタリア料理がイタメシと呼ばれ始めた頃から。つまり、1990年初頭だと記憶している。どういうワケか、イタメシの響きを聞くとハウスマヌカンが、決まって頭に浮かぶのだ。同時期には、ポケベル、エアマックス、ルーズソックス、ランバダ、スーパーファミコンがブームを巻き起こした。トレンディドラマの影響だろう、若者たちはこぞってお洒落な店でディナーした。
───僕はもつ鍋食べてたけれど。
煮込みハンバーグと目玉焼き。王道の組み合わせに文句なし。それにスパゲッティが加わると、お得な気分にもなるものだ。ご飯と味噌汁を頼んでハンバーグ定食が出来上る。激盛りとか、超美味いとか、そういう料理では無いのだけれど、遠い昔を懐かしむのに十分な味がした。
80年代の食事情ならハンバーグは単体でもおご馳走。昭和ですもの、田舎ですもの。ファミレスですか?、ありましたよ、グリーンハウスがありました。けれど僕らには関係ない店。3玉150円のうどん屋に入り浸る。友人らとそこでうどんを喰うのが楽しかった。究極、至高、美味しんぼから始まるグルメ文化と並行し、僕らの食事はそんなものだった。
遠い昔を懐かしみ、ハンバーグを食べ終えた頃、アジフライがカウンターに並んだ。今日はアジフライと縁が無かったようだ。
午後からも、頑張って桃の実を間引こう。
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