――久々のオフである。
いつからだろう、丸1日がフリーだなんて。よし!、寝よう。泥のように寝てやろう。だってそうでしょう?、おじいちゃんは疲れています。まだ7時半である。12時間寝ても7時半なのだ。相棒から送られて来た音源を聞きながら夢の中へ誘われる。その筈なのに畑に立っているのも不思議に思えて、今日もサヨリは元気です。
――行灯が気になって気になって……。
キュウリなどのウリ科の天敵、ウリハムシに有効な手段が行灯(あんどん)である。牛糞の袋だったり、鶏糞の袋だったり、腐葉土の袋だったり、米の袋だったり……。みなさんは、畑に謎の袋が立っているのを見たことがありませんか?。あれですよ、あれ。僕の場合は猫砂の袋で行灯にしていたのだけれど、お日様が足りないような気がして、だったらと、透明のビニール袋を買ったままなのに気づいてしまう。だから、もう、眠れない。眠りたいけど寝てられない。
――最後のお願いに参りました。
BGMにはウグイス嬢。高松市議会選挙も明日が投票日。あちらこちらから最後のお願いの大合唱。知ってる名前と知らない名前。四年後もお願いするのだから最後じゃないのに(笑)。今は畑に集中しよう。選挙は明日行きます。
キュウリと、ズッキーニと、ナスと、ピーマンと。猫砂の袋と透明ビニール袋を付け変える。大した作業では無い。だけど目が覚めてしまう。せっかく来たのだから畝の準備もしようと思った。麦の畝を片付けて1.5メートルの畝に仕立てた。この場所は日当たり抜群の一等地である。スイカにするか、大玉トマトにするか、はたまたメロンに行っちゃうか。すべてが育苗中であるから大きくなったものを植えるのだろう。まだ、考える猶予はたっぷりある。
もう一本は、トウモロコシの畝である。すでに22本の苗を植えつけているのだけれど、去年の美味さが忘れられずにもう一本立てるとお昼のチャイムが鳴り響く。帰ろうか、帰ろうよ。否、辛い仕事を後送りにしてはいけない。後輩の畑の雑草を取りに行かねば。後輩が抜き散らかした雑草を予約していたのだ。良い感じに乾燥しているのだから運んでおこう。
――結局、畝間に敷き詰めた。
持ってきた缶コーヒーを飲み干して苺を見ると赤くなってる。苺は大きな青虫を乗せていた。そっか、そっか、旨いのか。じゃ、お引き取り願おうかな。青虫を撥ね除けて、苺を見ていると小鳥が来た。なんか見たことも無いようなカラフルな小鳥であった。小鳥はロッカーの天板に着地失敗で滑って転んだ。そっか、そっか、大自然だな。僕はロッカーから100均の虫除けネットを苺に掛けた。
ゆるりとした時が流れてゆく。
――ところでさ、苺の受粉の立役者は誰?。
そう言えば、何が苺を実らせたのであろう。はっきり言って、畑の中では危険が危ないズズメバチしか見たことが無い。黄色いコンテナを椅子にして、ぐるりと畑を見渡しているとミツバチが飛んでいた。とんでもない数であった。去年も来ていたのだろうか?、みつばちなんて見たっけ?。
その記憶が全くない。
去年は全部が勝手に花が咲いて、勝手に実った。だから今年もイケるでしょ?。そんなぶらり散歩気分で二度目の畑をやっている。ブンブンブンを眺めながら、たまにはのんびり畑を愛でる大切さを知った。見るのでは無くて愛でないとデス。
――みつばちさま御一行、当店の人気ナンバーワンは葱坊主でございます。
相棒からの音源の主へも、僕の声は届いただろうか?。雷電を飛ばすのは再来週である。あの日の約束どおり準備するから乗りにおいで。その頃には、畑も見応え良くなっていると思うから。伝えて無いけど、神さまが伝える時間をくれなかったけれど、花も結構咲き始めているから。何の花だろうねぇ〜これは(汗)。
結局、愛猫サヨリの顔を見たのは夕方になってからである。もうね、激おこプンプンがウンコしながら僕に吠えていた。数億年に渡り行われた自然の摂理をしながら吠えていた。いやいや、ご飯は準備して行ったから。お皿、カラじゃん、食べてるじゃん。晩ご飯には早いから。それでもプンプンは止まらない。畑はブンブン、事務所はプンプン。早めのディナーを準備して、プンプンはご飯とミルクを一気に平らげた。老猫とは思えない、写真すら撮らせぬ早食いであった。あっぱれな食いっぷりである。
胃袋を満たしてプンプンもご機嫌が直ったのであろう。サヨリは当然のように僕の膝の上に乗っかった。そして、当然のようにイビキが始まる。その自由さと我が侭さ。彼の前世は征夷大将軍だったのかも知れない(笑)。
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