───畝を作った、苗も植えた。
きゅうり3本(一番星、いぼなし、夏バテしらず)、トマト3本(こいあじ、ピンキーカクテル、玉光デリシャス)、茄子2本(中長ナス、超やわらかナス)。これらをひとつの畝にまとめて植えた。
───めっちゃ突っ込まれてる気がしてならない。
我流は無形、きっと近所のプロたちから随分な事を言われるのだろう。もうね、人間サンドバック。そう、彼らは農業のプロフェッショナルたちだから、野菜に関して容赦はしない。それはそれで構わない。自転車は転んでこそ乗り方を覚えるもの。一発で素晴らしい野菜が育てられる方がどうかしている。
───まずはビニールひも。
それでも、見た目だけはスッキリさせたかった。今日の畝がこそが畑の基準。まず、ビニールひもを1本通す。60センチの間隔を空けて、平行にもう1本。このラインが全ての基準。そこから平行に畝を作ってゆく。不規則な自然の景色に規則的なラインが入ると、多少歪んでいても真っ直ぐに見える。人間の脳はそう出来ているのだ。
───視覚のトリックである。
元々、この畑には8本の畝が並んでいた。歩くのも作業するのもやりにくい空間だった。欲張りな母の畝である。僕は作業のし易さを重視するタイプ。動きやすいよう、効率良く動けるよう、畝の数は3本減らして5本と決めた。代わりに畝幅を広めに取り、作付け面積を確保する作戦である。
───正解かどうかは知らんけど。
この畝は60センチにしたけれど、これなら80センチでも問題なさそう。明日以降で10センチずつ幅を広げるつもりである。
本当ならば山で竹を切り、支柱立てまで終わらせたかった。けれど、母からの電話で直ぐに帰れとの事。いつもそう、いつだってそう。心の煽り運転の常習犯。途中で心をバッサリ折られる。集中力が途切れてからの記憶がない。
菜園の基本も、セオリーも、何も知らない僕だけれど、まずは1本仕上げてみた。この子らがスクスクと育つ未来があるのなら、その横では別の種類の子の姿も見ることが出来るだろう。どれが強くて、どれが、育てやすくて、どれが美味しく育つのか。何わからないものだから、全て別の名前の苗を買ってきた。
───収穫したら食べ比べ。
この夏、この土地は壮大な実験場となる。とは言え、早く作付けないと時期を過ぎる。すでに遅いとの指摘も受けている。けれど僕は知っている。モーガン・フリーマンのような遅咲きの花もあると言う事を。
だってそうでしょう?、時すでに遅しなら、ホーム・センターで苗なんて売ってないはずだから。あったとしても値下げしてるはずだから。まだイケる、もう少しだけチャンスある。だから頑張る。
そうそう、ビニールハウスも数千円から購入可能。これは夢が広がる話だ。今すぐ必要ではないのだけれど、冬季用に検討しても良いかも知れない。そう、割とマジでガチに考え始める自分が怖い。でもね、5千円だったら…そうも、考えてしまいます。
───母の用事の帰り道。
頭がくらくらして体が怠い。リフレッシュにと行きつけの銭湯へ立ち寄った。お風呂セットは常にスクーターの中でスタンバイ。問題ない。倦怠感が激しくて、もしかしたらと体重計に乗ると60キロを切っていた。あんなに遠かったグランドラインが目の前に。デジタル表示を見ながらほくそ笑む。
───畑の神様からのご褒美。
いただきました!。
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