───家庭菜園の本質とは戦いである。
ようやくトマトに実がついた。よく見ると青い実に小さな穴が開いていた。無数にである。なんだ、なんだ、シャアザクもやられたか?。
───ゆるすマジ!。
蚊トンボ一匹見あたらない、蜘蛛の子一匹存在しない。そんな畑は不気味である。違和感というより嫌な予感。どんだけ農薬散撒いてるの?。せっかく始めた家庭菜園だもの、農薬散布は極力避けたい。そのつもりで温存していた防虫液を取り出した。
───勿論、手作りでオーガニックである。
知ってる、それフライングでしょ?。それは実践導入にはまだ早い、熟成期間が足りてない。けれど、今は、背に腹は代えられない。危機的状況なのだからやるっきゃない。トマトが全部喰われてしまう。
───酢と唐辛子とニンニク。
これらをペットボトルに入れて2ヶ月ほど放置する。たったそれだけで、素敵な防虫液が出来るのだ。そう、麦藁隊長が言っていた。ガセだか何だか知らないけれど、知って秒で煎じていたのだ。つまり、逆算すると半月早い。そして防虫液の作り方にも不安がある。防鳥テグスのトラウマが蘇る、今の僕は疑心暗鬼なのだ。大切な何か、話の肝が抜けていたらどうしよう。人間に散布したら逆にパワーアップしそうでもある。
───ダメで元々、やってみるさ。
500ミリリットルのペットボトルに100均で購入したシュポシュポをセットする。水の量100に対して防虫液を1だけ混ぜた。鬼が出るか蛇が出るか、後は野となれ山となれ。やらない事には話にならない。失敗しても構わない…むしろ本望。
オレは打つ!、そして勝つ!。
───今回のターゲットはトマトと茄子と胡瓜の三種。
このゾーン、散々、葉っぱを食い散らかされたエリアである。美味いか?、そんなにうちの葉っぱが美味いのか?。いいも悪いもない。喰われた方がアホなんだ。だがな小僧、これくらいにしておけよ…またやってるその面を見たら、この世界じゃ首が飛ぶ。オレをなめた罪、それは最も重い実刑、情状酌量の余地はない。
こいつぅ〜シュッシュしちゃうぞ。
──防虫液を希釈して葉っぱの隅々にまで散布した。
茎も、表も、裏までも…ここぞとばかりにシュッシュする。こうなったら容赦はしない、泣いても決して許さない、限界までやる。さて、どうなる…この勝負。意気揚々と一夜を過ごし、朝、目覚めると雨だった。
恵みの雨に違いない、水やりだってお休み出来る。いつもの朝ならさぞかし喜んだ場面である。だがしかし、今日に限って気分が曇る。天は害虫に味方した。だってそうでしょう?、ピカピカに磨き上げた高級ベンツが翌朝見るとと雨ざらし。そんな気分である。それはアナタも同じでしょ?。
───防虫液は雨で流れた。
やり直し。
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