イモホレタのおいもあんぱんが徳島土産

　火曜日はレビューの日。

　２０２３年１２月１７日（日）

　お昼過ぎ、同僚ワーちゃんから電話が入る。

「今日わたし、徳島におるんよ……」

　だからどうした？

　それは、仕事絡みの話であった。けれど、僕には大した内容ではなかった。だから、スルーした。その日の夕方、再びワーちゃんから電話が入る。騒々しい先輩だ。

「今どこ？」

　いつもそう、いつだってそう。ワーちゃんの言葉に主語はない。

「俺、徳島にはいかんで！」

　僕は条件反射で守りに入る。今年、何度もいった徳島である。通ったと言っても過言ではない阿波あわの国。つい先月だって、徳島ラーメンを食べたところ。だから、お腹いっぱいだ。

　そんなことなどお構いなしに、ワーちゃんは続けてしゃべる。

「ブログネタが、あるんだけどなぁ～」

　このところワーちゃんは、僕のブログネタだと言って、なにかと提案をしてくる。否、仕掛けてくる。僕は今、小説が忙しいからブログネタは不要だよ。そんな僕を尻目に、ワーちゃんの話は止まらず、今日もサヨリは元気です（笑）

「徳島のね、パン屋さんにきてる」

　ワーちゃんは、続きを話したくてたまらない。

「へぇ～、そうなん？」

　僕の返事はそっけない。

「テレビとかで放送された有名なパン屋さん。パン買ったから持っていく！　待ってて！」

　ワーちゃんは、そう言ってスマホを切った。勢いに乗ったワーちゃんは、いつだって止まらない。僕は膝の上のサヨリと目を合わせた。

「パンがくるんだって」

「にゃぁ～」

　サヨリは面倒くさそうに返事した。

　１時間ほど経った頃。ワーちゃんが、僕の事務所にやってきた。

「はい、これ。ブログネタ」

　そう言い残し、風と共に去ってしまった。

　小さな紙袋の中には２個のパン。“ベーカリー イモホレタ”　そう、芋ともパンとも取れるイラストの下に書いてある。イラストに描かれたパンの切り口はハート形。イラストとロゴは、紙袋中央の透明ビニールに印刷されている。そこから、２個のパンの姿が見えた。

　そのフォルムは、だれもがイメージするパンというよりも、カップケーキのように見えた。赤紫の帽子がイチゴの味を連想させる。赤い台紙に金色で描かれた“Merry Christmas”の文字。嗚呼、僕は無事に〝ブログ王〟を書き終えられるのか？　軽くクリスマス恐怖症だ。

　紙袋からパンを出すと、僕はよからぬ想像をしてしまう。

　これキノコ？……それじゃない。

───まさしくこれは、アレだよな？

　パンを手に取るとズッシリとした重力を感じる。頭部のクッキー生地をパカリと捲めくると、少しだけ下腹部に痛みを感じた。パン生地の中にはお芋さん。これでもかとギュウギュウに詰めだ。さしずめ、贅沢な秋の味覚という感じ。

───よし、裏を取ろう！

　Ｇｏｏｇｌｅは、いつからこんな感じになったのか？　基本情報で検索しても見つからない。人の血の通った記事がない。イモホレタに“ブログ”にワードを足しても検索結果は変わらなかった。

　個人ブログは、完全にハブられていますかな？

　ブログがあっても、ＳＥＯ対策が施されたパンの写真ばかり。肝心要かなめの食レポが書かれていない。こいつは困った……記事が書けない。ブログ専用サーチエンジンを、これほど欲したことはない。

───おいもあんぱん ２９０円（税込）

　頼みの綱の“道の駅 くるくるなると”にも、写真と値段しか書いてない。仕方ない……ここからは、食べた感想を素直に書こう。ここからは、僕個人の主観である。

　上部の赤紫部分は、クッキー生地でサクサクとした歯触りは、メロンパンと似ている。下部はパン生地で、日常的に食べているパンの味。

　そのパン生地の中は空洞になっていて、裏ごししたのであろうサツマイモがぎっしりと詰まっている。このパンのミソはそこである。これでもかと詰められたサツマイモに贅沢さを感じてしまう。たしかに美味い。でも、違う。

　おいもあんぱん。

　あんこの存在が分からない。それを、僕の舌が感じられない。僕の舌が味バカだから？　そうなのか？　それとも、あんの比率が薄いのか？　情報が見つからないのだから、その理由が分からない。

　けれど、お芋の味を満喫したい。三度の飯よりサツマイモ。そんな方へのお土産ならば、アタリだと僕は思う。めったにサツマイモを食べない方ならば、きっと喜んで食べてくれるであろう。けれど、僕の反応は薄かった。

　だってそうでしょう？　僕は毎日サツマイモを食べている。この夏に畑で育てたサツマイモを。その追熟も終わって、今は糖度マックスなのである。それが、それが、友人に食わせてあげたいくらい美味いのだ。つまり、サツマイモの味に慣れている。そして、飽きている。

　もしも、今日が来年の２月以降なら、おいもあんぱんの食レポは、今日よりも壮大に書けたのだろう。最高のスパイスが空腹であるように、サツマイモを毎日食べていると、物珍しさがやっぱり足りない。次回は、その頃に差し入れて欲しいのな（汗）

　でも、ありがとう。

　たいへん美味しゅうございました（笑）