───コレ、捨てるの?。
良い感じの折りたたみ椅子が目に留まる。たぶん、ダイソーで売ってたやつだ(500円)。知人宅での出来事。畑に日陰を作ったけれど、椅子というものが存在しない。つまり、椅子が欲しいのだ。そんな矢先に出会ってしまった僕と椅子。これはもう、運命でしょう?。
───いや、捨てないかも知れない。お前を見たら、そんな気分しかしない。
僕の目がギラギラしていたのだろう、急に惜しくなったようで返事が濁る。くれるくれないは別として、座り心地だけでも確認させてもらう事にした───何コレ、良いじゃん。小さな椅子が僕の体にベストフィット。その座り心地はオーダーメイドの椅子のよう。お尻の位置がすごく良い。急遽、リュックの中のポメラを引っ張り出し、お試しでこの記事を書き始めた。最後まで書き切る必要はない、枕だけでも仕上げておこう。
───キータッチの感触も悪くない。
膝の上でポメラを打つ、そんな電車通勤的発想など無かったけれど、この折りたたみ椅子なら問題なく記事が書ける。畑でポメラ?───そう思われるだろうけれど、畑での出来事は畑で書こう。そう最初から決めていた。だってそうでしょう?、記憶の鮮度が全然違う。だから文章の勢いが全然変わる。これを書こう、あれを書こう。僕の脳が反応したとて、小一時間も経てばこうなるのに決まってる。
───何だっけ、忘れた?。
そんなぶらり散歩気分な記憶はすぐに消え、そこから始まるジェシカおばさんの事件簿。じじいの毎日はミステリー、さっきまで使っていた筈のボールペンが忽然と消える。若い皆さんは想像できるだろうか?。それを探し出す為に、どれだけの労力と時間が必要となるのかを。頭の中の、ジェシカおばさん、コナンくん、右京さん、当麻紗綾を総動員、記憶の中を推理する。残念だけれど、未だ謎が解けた試し無し。大切な何か、肝になる何かが思い出せない。
───思い付いたらその場で記録。
そのためのポメラである。この作業、スマホでもタブレットならいとも簡単。けれど、優秀な機器にメモに残しても殆ど見ない。何でも出来る機器を使うと、脳内で興味が分散されてしまうのだろう。ネットやSNSなど、別の事を始めてしまう。そんな意味からもポメラはかなり老人向け。
───知ってる、それ嘘でしょ?。大げさに書いちゃってるんでしょ?。
アナタが数年後、数十年後に身に染みて痛感する未来だと断言出来る───いずれそうなる、覚悟しな。僕だって、そう言われ続けて今日を生きているのだ。あれ、これ、それ。こんな会話が成立する生活に慣れてしまうと、記憶の維持すら大変なのだ。
───その気になったら連絡ヨロシク。
このサイズ感に一目惚れ、ダイソーで買うか連絡を待つか、そもそもダイソーの椅子なのか?。後ろ髪をひかれる思いでスクーターを走らせた。進むべく道筋は決めていた。
───もちろん、ダイソーチェックである。
同じ商品だったら買って帰ろ、五百円なら痛くない。
───追記
記事を投稿すると、すぐさま知人から連絡が入った───それ、ダイソーの折り畳み椅子じゃないから!。それ、ノースイーグルのコンパクトチェアだから!。無知は罪だわよね、それとも罰かしら…。
ネットで調べてみるとそうだった。
カチンと来たけれど、こればかりは言い返せません。座り心地が忘れられなくて、ダイソーのでは満足できない気がする。そうなると、今しばらく様子見が吉。
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